第17話 理路整然と説明する有希と口答えする中学生のような伸
文字数 1,131文字
伸の心配をよそに、有希は、自分が怪我をしてから今までの経緯を、かなり簡潔ではあるが、理路整然と冷静に説明した。
「……はい。ご迷惑をおかけしてすいません。……はい。伸くんがそばにいてくれれば。……そんな……」
ちらりと伸を見てから、再び話し出す。
「ありがとうございます。母に話します。……はい。伸くんに代わります」
そして、伸にスマートフォンを差し出した。
「もしもし?」
「あぁ、伸。そんなことになっていたなんて、ちっとも知らなかったわ」
「黙っていてごめん」
「それはいいけど、有希くんにも言ったけど、近いうちに、お見舞いに伺うわ」
伸はあわてる。
「そんな、ご迷惑だよ」
麗衣も暮らしている実家に来るなんて。
「でも、有希くんはいいって言ったわよ」
「そりゃあ、来るなとは言えないだろ」
思わず顔を見ると、有希が微笑んで言った。
「いいよ。ママもいいって言うと思うけど」
「そうかな……」
それから、潤子に向かって言う。
「来るときは、いきなり来ないで事前に言ってよ。麗衣さんの都合もあると思うから」
そういえば、伸のマンションで二人で過ごしていたときに、突然、潤子が訪ねて来たことが、カミングアウトするきっかけになったのだった。
「わかってるわよ。あなたのことでは、以前から麗衣さんにお世話になっているし、こういうことがなくても、一度ご挨拶したいと思っていたのよ」
「あぁ、それから、来るときは、きちんとした格好で来てよ」
これは親切のつもりで言った。ラフな服装でやって来て、この家のたたずまいを見たら、きっと後悔するに違いないから。
あぁ驚いた。ため息をついて、スマートフォンをベッドサイドに置く。
ヘッドレストに背を預けながら横を見ると、有希がくすりと笑った。
「伸くんでも、あんな言い方するんだね」
「あ、ちょっときつかったかな」
有希は、にこにこしながら言う。
「そんなことはないけど、中学生が口答えしているみたいで、かわいかった」
「な……!」
「潤子さんに会うの、楽しみだな。あっ。でも……」
突然、有希は表情を曇らせた。
「この傷、潤子さんが見たら……」
そう言いながら、頬の傷に手を当ててうつむく。抜糸をして、絆創膏も取れたが、赤みを帯びた傷が、白い頬に長く斜めに走っている。
「そんなこと、母は気にしないよ」
「そうかな……」
「そうだよ。だから、ユウも気にしなくていい」
そうは言ったものの、にわかに心配になる。潤子が傷を見て動揺すれば、有希はショックを受けるだろう。
潤子には、事前に傷のことを知らせておかなくてはいけない。とは言え、有希に知られずに電話をかけるのは難しそうだ。
有希の肩に触れながら、伸は考える。有希が眠っているときにでも、メールしておこうか……。
「……はい。ご迷惑をおかけしてすいません。……はい。伸くんがそばにいてくれれば。……そんな……」
ちらりと伸を見てから、再び話し出す。
「ありがとうございます。母に話します。……はい。伸くんに代わります」
そして、伸にスマートフォンを差し出した。
「もしもし?」
「あぁ、伸。そんなことになっていたなんて、ちっとも知らなかったわ」
「黙っていてごめん」
「それはいいけど、有希くんにも言ったけど、近いうちに、お見舞いに伺うわ」
伸はあわてる。
「そんな、ご迷惑だよ」
麗衣も暮らしている実家に来るなんて。
「でも、有希くんはいいって言ったわよ」
「そりゃあ、来るなとは言えないだろ」
思わず顔を見ると、有希が微笑んで言った。
「いいよ。ママもいいって言うと思うけど」
「そうかな……」
それから、潤子に向かって言う。
「来るときは、いきなり来ないで事前に言ってよ。麗衣さんの都合もあると思うから」
そういえば、伸のマンションで二人で過ごしていたときに、突然、潤子が訪ねて来たことが、カミングアウトするきっかけになったのだった。
「わかってるわよ。あなたのことでは、以前から麗衣さんにお世話になっているし、こういうことがなくても、一度ご挨拶したいと思っていたのよ」
「あぁ、それから、来るときは、きちんとした格好で来てよ」
これは親切のつもりで言った。ラフな服装でやって来て、この家のたたずまいを見たら、きっと後悔するに違いないから。
あぁ驚いた。ため息をついて、スマートフォンをベッドサイドに置く。
ヘッドレストに背を預けながら横を見ると、有希がくすりと笑った。
「伸くんでも、あんな言い方するんだね」
「あ、ちょっときつかったかな」
有希は、にこにこしながら言う。
「そんなことはないけど、中学生が口答えしているみたいで、かわいかった」
「な……!」
「潤子さんに会うの、楽しみだな。あっ。でも……」
突然、有希は表情を曇らせた。
「この傷、潤子さんが見たら……」
そう言いながら、頬の傷に手を当ててうつむく。抜糸をして、絆創膏も取れたが、赤みを帯びた傷が、白い頬に長く斜めに走っている。
「そんなこと、母は気にしないよ」
「そうかな……」
「そうだよ。だから、ユウも気にしなくていい」
そうは言ったものの、にわかに心配になる。潤子が傷を見て動揺すれば、有希はショックを受けるだろう。
潤子には、事前に傷のことを知らせておかなくてはいけない。とは言え、有希に知られずに電話をかけるのは難しそうだ。
有希の肩に触れながら、伸は考える。有希が眠っているときにでも、メールしておこうか……。