第26話 デジカメとコラージュと照れる伸
文字数 1,113文字
「おはよう」
長ネギを刻んでいた伸は、顔を上げて、部屋から下りて来た麗衣に返す。
「おはようございます」
「いい匂い。今日は和食なのね」
「はい」
長ネギは、味噌汁の具にするのだ。
「おはよう」
いつになく明るい声で言った有希の手元を見て、麗衣が声を上げた。
「それ、どうしたの?」
「これ?」
有希がテーブルに置いたデジカメを手で持って示す。
「伸くんが買ってくれた。伸くんの料理を撮るんだよ」
麗衣は、伸をちらりと見てから、有希に言った。
「スマホがあるじゃないの」
「だって……」
伸は助け舟を出す。
「俺がプレゼントするって言ったんです。今のデジカメは多機能だし扱いやすいから、いろいろ楽しめるんじゃないかと思って」
「そうなの。なんだか申し訳ないわね」
「いえ」
伸は、笑顔で首を横に振る。有希が言った。
「ママも撮ってあげる」
「ママはいいわよ……」
その日以来、有希は料理だけでなく、部屋の中の小物や窓から見た空など、あらゆるものを撮るようになった。伸にも頻繁にカメラを向けて来るので、場合によっては気まずいときもあるのだが、有希の好きなようにさせている。
有希は楽しそうに写真を撮っているし、以前より元気になったようなのがうれしい。そのうち有希は、パソコンに取り込んだ画像をあれこれと加工して楽しむようになった。
「伸くん、これ見て」
パソコンに向かっていた有希が、振り返って伸を呼ぶ。ベッドに腰かけてネットのニュースをチェックしていた伸は、スマートフォンを置いてそばに行く。
「何?」
有希がにっこり笑う。
「コラージュだよ」
「どれどれ。おっ……と」
パソコンの画面を見た伸は、思わずのけぞった。あらゆる角度や表情の伸が、あらゆる加工をされて一つの画像の中に収まっている。
有希が得意げに言った。
「力作でしょう? ほら、この伸くんとか絵画風の加工をしてみたんだ」
「いや。まぁ」
「あれ? 気に入らなかった?」
「いや。そんなことはないけど」
「ないけど?」
「ちょっとびっくりした」
長い時間パソコンに向かっていると思ったら、こんなものを作っていたとは……。だが、有希は楽しそうに言う。
「これ、パソコンの壁紙にしようかなぁ。でも、壁紙にするならやっぱりドーンとアップのほうがいいかなぁ」
伸はあわてる。
「勘弁してくれ。恥ずかしいよ」
だが、有希は平気な顔で言う。
「いいじゃない。どうせ僕しか見ないんだから」
「麗衣さんだって見ることがあるかもしれないだろ」
「今さらママのこと気にする? 毎日一つのベッドで寝ているのに?」
「それとこれとは別だよ」
一緒に寝ていることだって、気にしてはいるのだ。だが、伸の言葉に、有希は首を傾げた。
「意味わかんない……」
長ネギを刻んでいた伸は、顔を上げて、部屋から下りて来た麗衣に返す。
「おはようございます」
「いい匂い。今日は和食なのね」
「はい」
長ネギは、味噌汁の具にするのだ。
「おはよう」
いつになく明るい声で言った有希の手元を見て、麗衣が声を上げた。
「それ、どうしたの?」
「これ?」
有希がテーブルに置いたデジカメを手で持って示す。
「伸くんが買ってくれた。伸くんの料理を撮るんだよ」
麗衣は、伸をちらりと見てから、有希に言った。
「スマホがあるじゃないの」
「だって……」
伸は助け舟を出す。
「俺がプレゼントするって言ったんです。今のデジカメは多機能だし扱いやすいから、いろいろ楽しめるんじゃないかと思って」
「そうなの。なんだか申し訳ないわね」
「いえ」
伸は、笑顔で首を横に振る。有希が言った。
「ママも撮ってあげる」
「ママはいいわよ……」
その日以来、有希は料理だけでなく、部屋の中の小物や窓から見た空など、あらゆるものを撮るようになった。伸にも頻繁にカメラを向けて来るので、場合によっては気まずいときもあるのだが、有希の好きなようにさせている。
有希は楽しそうに写真を撮っているし、以前より元気になったようなのがうれしい。そのうち有希は、パソコンに取り込んだ画像をあれこれと加工して楽しむようになった。
「伸くん、これ見て」
パソコンに向かっていた有希が、振り返って伸を呼ぶ。ベッドに腰かけてネットのニュースをチェックしていた伸は、スマートフォンを置いてそばに行く。
「何?」
有希がにっこり笑う。
「コラージュだよ」
「どれどれ。おっ……と」
パソコンの画面を見た伸は、思わずのけぞった。あらゆる角度や表情の伸が、あらゆる加工をされて一つの画像の中に収まっている。
有希が得意げに言った。
「力作でしょう? ほら、この伸くんとか絵画風の加工をしてみたんだ」
「いや。まぁ」
「あれ? 気に入らなかった?」
「いや。そんなことはないけど」
「ないけど?」
「ちょっとびっくりした」
長い時間パソコンに向かっていると思ったら、こんなものを作っていたとは……。だが、有希は楽しそうに言う。
「これ、パソコンの壁紙にしようかなぁ。でも、壁紙にするならやっぱりドーンとアップのほうがいいかなぁ」
伸はあわてる。
「勘弁してくれ。恥ずかしいよ」
だが、有希は平気な顔で言う。
「いいじゃない。どうせ僕しか見ないんだから」
「麗衣さんだって見ることがあるかもしれないだろ」
「今さらママのこと気にする? 毎日一つのベッドで寝ているのに?」
「それとこれとは別だよ」
一緒に寝ていることだって、気にしてはいるのだ。だが、伸の言葉に、有希は首を傾げた。
「意味わかんない……」