第47話 生野と有希の激しい口論と伸の戸惑い

文字数 696文字

 どうするべきかと考えていると、生野が、カチャンと音を立ててフォークを皿に置いた。
「俺のせいなのか?」
 伸は、はっとして生野を見る。彼の顔も青ざめている。
「そんなに俺に会うのが嫌だったのか?」
「生野くん」
 生野が、深いため息をついて言った。
「俺は馬鹿だな……」

 困った。この場をなんとかしなくてはいけない。そう思いながら、どうしていいかわからずにあたふたしていると、有希がうつむいたまま言った。
「そういう生野こそ、僕の惨めな姿を見て満足した?」
「……なんだって?」
 有希が顔を上げる。
「襲われて、顔に消えない傷をつけられて、何ヶ月も引きこもっている僕を見て満足かって聞いているんだよ」
「ユウ! 何を言うんだ」

「俺が、そんなことのためにここに来たと思っているのか? 昔、お前に振られた腹いせに?」
 生野の声は怒りに震えている。有希も激しい口調で言い返す。
「ほかに何があるっていうんだよ。僕のことを心配しているって? それなら、僕に何かしてくれるの? 
 この醜い傷を消してくれる? 何度も何度もフラッシュバックするあの日の記憶を消してくれる? 繰り返し見る悪夢を消してくれる!?
「もうやめろ!」
 伸は、有希の肩を抱きしめた。有希の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
 
「……そうだよな。お前にとって、俺はいらない人間だ。何かメリットでもなけりゃ、会う価値もない」
「生野くん。そういう意味じゃないよ」
 伸の言葉に、生野がふっと笑う。
「そうですよね。西原には、安藤さんが片時も離れず寄り添っていて、何かあれば、そうやって抱きしめて慰めてやっている。
 俺なんかの出る幕はないってわかっていたのに……」
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