第16話 鍛錬十戎、風呂の風景など

文字数 2,206文字

■日程・行先不定の車中泊の旅 ⑯
4/1その②
昨晩は、よかれと思って選んだ〝宿〟だがミスマッチだった。
いつものように早い眠りについたのだが、何やら外が次第に騒々しくなってきた。車のライトで頻繁に照らされ、ドアを閉める音がうるさい。
今頃なんだ?と外を覗くと、若い男女が次々車から降りる。あれだけ空いていた駐車場が満杯になり私の〝宿〟の隣りにまで駐車した。
そうか、ここは夜のデートスポットだったんだ! よもやそんなところだとは想像だにできなかった。弘法も筆の誤りだがやむを得ない。既にアルコールも入っていては移動もできない。まさか彼らもここを〝宿〟にする訳ではないだろう(笑)そのうち帰るはずだ。
案の定9時を過ぎた頃、車は潮が引いたように動き出した。そしてあっという間に残された車は一台だけになっていた(笑) 若者たちはまた別の〝楽しいところ〟に移ったのだろう。そこがどこから想像にお任せするが…(笑)

ここは恵那市民の憩いの場所。昼は親子連れの遊び場、夜は若者のデートスポット。見事に使い分けられている。これほど極端な場所を初めてみた。

静寂に戻ったはずの公園だが、なんと新たな騒音に見舞われた。ガーとザーの間の子のような汚らしい鳴き声だ。鳥の声でこんなのを聞いたことがないので獣のようだ。木の高いところから聞こえてくるからムササビだろうか。ムササビは夜行性なので、あるいは今が恋の季節かも知れない。それにしてもやかましい鳴き声だ。相当数が合唱しているようだ。
その鳴き声が10時半頃突然止んだ。見事にだ。こんな規律正しい動物はいるんだろうか?不思議なもんだ。


昨日に続いて「恵那ラジウム温泉館」の湯に浸かった。
車内での「仕事」は姿勢が悪いので、時々外に出て飛んだり跳ねたりするのだが、熱が入るとつい長居をしてしまう。普段家では「鍛錬10戒」と書いた紙を壁に貼って横着にならないように戒めているのだが、旅に出るとそのリズムが狂う。
私の10の鍛錬は、①体幹トレーニング②空気縄跳び③腕立て伏せ④スクワット⑤腹筋⑥つま先立ち⑦かかと落とし⑧真向法⑨16時間断食⑩一酸化窒素握りである。いずれも室内で完結するようにアレンジしている。これもデビットAシンクレアを読んでから徹底するように殊更心がけている。

それが旅に出るとままならないので、悪い姿勢同じ姿勢を10日間余りくり返したらさすがに腰にきた。今日はラジウム泉にあやかろうといつも以上に早めに来て長居を決め込んではみたが… なかなか効果のほどは判らない(笑)

さて温泉・すなわち風呂だが、今回も毎日大変お世話になっている(笑) 行く先々の風呂では、見知らぬ人の入浴の仕草をつぶさに、心行くまで見せてもらっている。また見せている。
風呂の入り方は大きく二種類に分けられる。私のような風呂好きは、一にも二にも湯船に浸かりたい。かけ湯がもどかしいほどに。ところがそれとは真逆の人がいる。入ってくるとかけ湯もしないでそのままカランの前に座る。シャワーでかけ流すのならまだしも、いきなりシャンプーをしたかと思うとその後に体を石鹸でゴシゴシ始める。一通り〝洗浄〟が終わってからようやく湯船にやってくる。ところが、中には数十秒すると立ち上がり、「また体の洗浄か?」と思っているとそのまま出て行ったしまう(笑) 私には相当の猛者(もさ)にしか思えない(笑)

次に目立つのは、石鹸やシャンプー、そして湯水を大量に使う人。「銭っぷり使わないと死んでも死にきれない」と思っているようで、後ろでストレッチをしている私にまでシャワーをかけてくれる(笑) いくら磨いたって一週間もつ訳ではない。そんなに磨くと皮膚が傷むよ、と云いたいところだが我慢する。
ところで、外人さんはどんな仕草をするのだろうと感心があるが、まだ一緒に入浴したことがない。海外旅行で何度か温泉に入ったが、みな水着姿。プールの気分で温泉(風呂)の気分ではない。だた洋画では、泡だらけの小さな湯船に入ってそのまま石鹸を流さないでバスタオルで拭いて出るシーンを見かけるが、風情のない入浴だと思う。
さて私はと云えば、すぐに湯船に浸かる。それも長く。石鹸やシャンプー類はあまり使わない。カランの湯水も多く流さない。文句のつけどころのない入浴者といえそうだが…!? 私は時間があって、空いていれば1時間くらい滞在する。入浴のためというより湯に浸かると体が柔らかになってストレッチがしやすいからだ。が岡目八目ではないか?「大量に使う人」と同じように見られているのではないかと気にすることもある(笑)
いずれにしても温泉は、日本人の清潔好きお風呂好きを物語るものであり、誠にありがたい施設である。ことに変わりはない。

「花見」を約束した友人から連絡が入った。「詳細」が煮詰まった連絡ではなく「中止」の連絡であった。もっともその訳は、私が「コロナで万が一があったとき、その要因の一つに遠方の友との交わりがあったとしたら、周囲からの視線は大丈夫か?」と懸念を伝えていたからでもある。メンバーと相談したら「止めとこう」となったらしい。妥当な判断と受けとめた。

それで、私の帰宅も決まった。
丁度気温も上がりだし、飼育している日本ミツバチの分蜂(新しく群れが生まれる巣別れ)も気になり出したので帰ることにした。「明日帰ろう!」 予定のない旅は何をするにも気ままである(笑)
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