第9話 「釜沼温泉」中津川の青年

文字数 2,122文字

■日程・行先不定の車中泊の旅 ⑨
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木曽町三岳の「太陽の丘公園」の朝は一面霜の世界だった。雪国越後ではみられない風景だ。夕べはいわゆる「底冷え」の感触、これも越後ではあまりない季節感だ。スマホを操る手にも冷気がかかる。
旅日記の整理を始めたら切りがない。急ぐ旅でもない。環境も悪くないのでもう一日逗留することに決めた。
昼近くなったら飲料水が少ないことに気づいて、公園の水道を探したがない。トイレも鍵がかかっていた。下って道の駅三岳に移ることにした。

道の駅とは言っても、ここは駐車場に毛がはえた直売所と加工所のような施設があるだけ。でも車中泊にはもってこいの場所だ。
まずは“大好き”な洗濯。水のありがたさを覚える瞬間でもある。そしてますます洗濯が好きになる(笑)
昼飯は、夕べの残り飯に野菜スープ。健康食並びに粗食のすすめである(笑)??普段、馳走ばかり「食わされて」いるから(笑)、たまの一汁一菜は胃袋の機能回復にはもってこいだ(笑)と。

道の駅のWi-Fiは総じてつなぎがよくないし速度が遅い。特にパソコンで「仕事」に使う際はよく切れて、再接続がめんどうでならない。
もっともスマホや携帯だけなら、キャリアのネットワークがあるのでWi-Fiは必要としない。必要とするのは海外客とパソコンを使う人だから、ないがしろにされやすい。でも、いつまでもそれでは済まされない。私も海外に行くので解るが、Wi-Fiの可否はその国の評価を著しく左右するからだ。
とは云うものの、ようやく三岳のような所でもWi-Fiが使えるようになった。しかしまだまだだ!日本は…。ガンバれスガくん(笑)

道の駅の軒先でツバメが燕返しをした(笑)もう来たんだ! 空を見上げた。イワツバメもひらひらと舞っていた。一緒に来た訳でないだろに、一緒に春を連れて来たんだ(^-^)

そうこうしているうちに、温泉時間になる。件の宿は宿泊客優先なので、入浴のみは4時までだという。
逗留だというのに忙しい。本を読む暇もないから頁がすすまない。運動時間も忘れる位だから仕方がない(笑)

近くの釜沼温泉「大喜泉」では、今日も「貸し切り風呂」かと思ったら、ほとんど同時に岐阜ナンバーが入ってきた。近くの県境、岐阜県中津川の青年でここは初めてだと言う。
中津川といえば、栗きんとんと恵那山を思い出しますね、と言ったら「よくご存知ですね」と嬉しがられた。
「まあね」と続けて、「商売柄、ほとんど全国的に口会わせぐらいはできます」と返答したが、それ以上突っ込んで来なかったのは嬉しくもあり、悲しくもあった(笑)
「栗きんとんは今も商売繁盛ですか?」と聞いたら、栗が間に合わず九州から“輸入”していると云う。
「私の栗きんとんの認識は正月のおせち程度、普段ほとんど食べないのに、どこにそれほど需要があるのですか?」と聞いたら
「中津川の栗きんとんは正月のおせちとは違うお菓子です」に続けて
「栗の季節限定で荒稼ぎをして、それ以外の時期は別のお菓子でつなぐので廃れていません」との説明であった。
栗も地元産で間に合わずやむなく九州からだが、中津川の栗屋が現地に土地を確保して栽培した栗を使っているとも。それなりに理屈の整合性を合わせているようだ。
とはいえ、栗きんとんは「名物」の範囲で、主要産業はトヨタや三菱関連企業だとも…。

久方ぶりに会話らしい会話をした。
人は幾日も会話しないでいると、声が出なくなる。自分自身の経験でも経験済みだ。だから、例えば一人山行の時は熊と"会話"をしながら歩く(笑)
それだけでなく、会話で新しい世界を知る。人とのふれあいがその基本であり、その中で会話が生まれる。
それが出来ないコロナ禍は、これからの社会に何をもたらすのか?人の認識を変えざるを得ないほどの激変社会をもたらすかも知れない。

さて、ここの温泉だ。大喜泉はかつて「日本秘湯を守る会」員だったけど今は辞めたようだ。会費が経営に影響するほど高いのか、あるいはそれ以外の理由なのかは知る由もないが、私的には「守る会」であった方がカッコいいと思えた(笑)

泉質は炭酸水を含んだ鉱泉で、湯上がりに飲んだ鉱泉水では、炭酸が確かに口に広がった。
お湯は加温だが適温で居心地が良かった。隣の湯船には源泉が引かれていた。源泉は12度で、それに浸かってから温泉に入ると、熱いと思ったら不思議なことにぬるく感じた。

素朴な山合の一軒宿で、「温泉文化」を守る貴重な温泉宿。これからも頑張って欲しい宿の一つであった。ちなみに料金は700円であった。

夕食の時間。ゆとりがあったので、時間のかかる玄米炊飯にした。玄米炊飯といえば圧力釜が定番である。自宅ではいつもそうしているが、ここにはそんな物はない。
コッヘルでの白米炊飯のコツは覚えたが、玄米はあまりしなかったが今回それを大体会得した。玄米は完全食なのでその成果を今後に活かそう(笑)

近隣にコンビニもないので発泡酒とはいかず、初っぱなから日本酒で「宴会」は始まる。玄米が炊き上がる頃には出来上がってしまった(笑) 春の夜長も風前の灯、明日は明日の風がまた吹く!と云いながら、「年(歳)の残り」を忘れ去るのである。
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