第13話 パウリの業績おさらい

文字数 4,044文字

終わりが近くなってきた。ここでパウリの業績おさらいをしておこう(Wikipedia)。

1924年、パウリは分子線スペクトルの観測結果と当時発展しつつあった量子力学との間にあった矛盾を解決するために、新たな量子自由度のモデルを提案した。おそらく彼の仕事の中で最も重要なパウリの排他原理である。この原理は同じ量子状態には2個以上の電子が存在できないというものであった。その後、スピンのアイデアがラルフ・クローニッヒによって考案され、翌年にジョージ・ウーレンベックとサミュエル・ハウストミットによってパウリの提唱したこの自由度が電子のスピンに相当することが明らかとなった。

1926年、ハイゼンベルクが現代的な量子力学の理論である行列力学を発表した後でパウリはこの理論を用いて水素原子のスペクトルを理論的に導いた。この成果はハイゼンベルクの理論の信頼性を保証した点で重要な結果だった。

1927年、パウリはスピン演算子の基底としてパウリ行列を導入し、これによってスピンの非相対論的理論に解を与えた。この成果はポール・ディラックに影響を与え、後にディラックは相対論的電子を記述するディラック方程式を発見した。

1930年、パウリは放射性同位元素の原子核崩壊で中性粒子が存在することを予言した。"Liebe radioaktive Damen und Herren"(親愛なる放射性紳士淑女の皆様)と題してリーゼ・マイトナー他宛に送られた12月4日の書簡において彼は、ベータ崩壊で放出される粒子のエネルギースペクトルの連続性を説明するために、それまで知られていない中性で質量の小さな(陽子質量の1%未満の)粒子の存在を明言した。1934年にフェルミが、パウリの提唱した中性粒子にニュートリノと命名し、自分の放射性壊変の理論に組み込んだ。 ニュートリノは1959年になって初めて実験的に観測された。

1940年、パウリは量子場の理論にとって重要な成果となるスピン統計定理の証明を行ない、半整数のスピンを持つ粒子はフェルミオンであり、整数スピンを持つ粒子はボソンであることを示した。1953年王立協会外国人会員選出。


******** Wolfgang Pauli lecturing (1929) WikipediaのPublic Domainの画像 ********

それでは、このエピソードの最後に、口が悪いと評判だったパウリの名言を挙げておこう。
https://beruhmte-zitate.de/autoren/wolfgang-pauli/ サイトをGoogle翻訳。
原文を知りたい場合は、このサイトを参照。

1.「"Das ist nicht nur nicht richtig, es ist nicht einmal falsch!"[この論文は、間違ってすらいない(正しいとか間違えているとかという次元にさえ至っていない)]」

2.「精神は内なる中心から、外向という意味で物理世界へ外へ向かって動いているように見えます。そこでは起こることはすべて自動的に行われ、その結果、精神はいわば静止したままの観念とともにこの物理世界を取り囲んでいます。 」 — ヴォルフガング・パウリ ケプラーにおける科学理論の形成に対する原型的考え方の影響、カール・グスタフ・ユングとヴォルフガング・パウリ、「自然と精神の説明」、ラッシャー、チューリッヒ、1952年、132ページ
(=『自然現象と心の構造』)

3.「私の個人的な見解は、将来の科学では現実は「精神的」でも「物理的」でもなく、どういうわけかその両方であり、どういうわけかどちらでもないということです。」 — ヴォルフガング・パウリ 1950 年 8 月 17 日のアブラハム・パイスへの手紙、カール・フォン・マイエン(編):ヴォルフガング・パウリ。Scientific Correspondence、第 4 巻、パート I: 1950 ~ 1952 年、シュプリンガー、ベルリン、1996。P. 152 Books.google

4.「純粋に心理的な解釈では、問題の半分しか理解できません。残りの半分は、現代物理学で実際に適用されている用語の典型的な基礎を明らかにすることです。」
ヴォルフガング・パウリ カール・ユングへの手紙 (1948 年 6 月 16 日)
文脈: 純粋に心理的な解釈では、問題の半分しか理解できません。残りの半分は、現代物理学で実際に適用されている用語の典型的な基礎を明らかにすることです。現代人の無意識を通じた「背景物理学」の生成において最終的な観察方法が見なければならないのは、物理学と精神を均一に構成する未来の自然記述への客観の方向付けであり、現時点で私たちがそうしている記述形式である。先科学的な段階でのみ経験している。このような自然の統一的な記述を達成するには、科学用語や概念の典型的な背景に頼ることが不可欠であると思われます。

5.「感覚の認識と概念との間の橋渡しについての質問に対する答えは何でしょうか。この質問は、外側の認識と内側のイメージのような表現の間の橋渡しについての質問に帰着します。」
ヴォルフガング・パウリ マルクス・フィエルツへの手紙 (1948 年)
文脈: 感覚の認識と概念の間の橋渡しに関する質問に対する答えは何でしょうか。この質問は今や、外側の認識とそれらの内なるイメージの間の橋渡しに関する質問に帰着します。私には、人間の恣意性の外にある宇宙的な自然秩序を仮定しなければならないように思えます。外側の物質的な物体も、内側のイメージと同様にその影響を受けます...組織化と調整は、物理的と精神的な区別を超えて仮定されなければなりません...私は、この「組織化と規制」を「原型」と呼ぶことに大賛成です。したがって、これらを心霊コンテンツと定義することは容認できません。むしろ、上記の内部像(集合的無意識の支配者、ユングを参照)は元型の精神的な現れですが、物質の世界に属するすべての自然法則を生成し、条件付けする必要があります。物質の自然法則は、原型の物理的な現れとなるでしょう。
(『自然現象と心の構造』にも同じような文章があった)

6.「私は徐々に、そのような空想や夢は無意味でも純粋に恣意的なものでもなく、むしろ適用される用語の一種の「第二の意味」を伝えるものであることを認めるようになりました。」
ヴォルフガング・パウリ 物理用語に関する夢を見た後、カール・ユングへの手紙(1948年6月16日)の中で、彼は最初は無意識による「物理用語の誤用」として却下したが、その後、 私はこれらの夢の客観的な性質を認識するようになった。または空想…このようにして、そのような空想や夢は無意味でも純粋に恣意的なものでもなく、むしろ適用される用語の一種の「第二の意味」を伝えるものであることを私は徐々に認めるようになりました。

7.「ユング研究所の設立の際に、花瓶をひっくり返したあの面白い「パウリ効果」が起こったとき、私は即座に「中に水を注ぎ出さなければならない」という鮮烈な印象を持ちました(――象徴的な言葉を使うと)あなたから取得しました)。」
ヴォルフガング・パウリ カール・ユングへの手紙 (1948 年 6 月 16 日)、明らかに部屋に入ったときに自然発生的に花瓶が倒れた事件について言及したもの、およびエッセイ: 「背景物理学」の現代の例。ユングとパウリは、シンクロニシティ理論の開発に協力しました。 背景: ユング研究所の設立の際に、花瓶をひっくり返したという面白い「パウリ効果」が起こったとき、私は即座に「中に水を注ぐ」べきだという鮮烈な印象を持ちました(—という象徴的な言葉を使うと)あなたから入手しました)。その後、心理学と物理学の関係があなたの講演の比較的大きな部分を占めたとき、私が何をすべきかがさらに明確になりました。これらすべての結果が同封のエッセイです。
(これは特に面白いので、対応する英文を添えておく)

“When that amusing "Pauli effect" of the overturned vase occurred, on the occasion of the founding of the Jung Institute, I had the immediate and vivid impression that I should "pour out water inside" (— to use the symbolic language that I have acquired from you).”

『自然現象と心の構造』についてWikipediaより:
パウリの論文「ケプラーの科学的理論構築に与えた元型的イデアの影響」にて、彼のプラトンやピタゴラス的な世界観をC・G・ユングと共に記しており、それは彼の友人であり物理学者のヴェルナー・ハイゼンベルクの著書『限界を超えて』の第3章に要約されている。 ハイゼンベルクによれば、体験したデータから自然法則が引き出せるという純粋な経験主義ではなく、感覚的知覚と概念、もしくは「感覚的知覚とイデア」を結びつけるものを探し、それをユングの元型の論の中に見出していて、元型のようにイメージが先行しているという見解の源流は哲学者プラトンの思想である。西洋思想では、19世紀の科学が客観的な物質的世界を生み出したが、東西を問わず古くから、多様性を超越して一体性を体験しようとする神秘主義があり、この二極が相補的であることを認める必要があるとした

パウリのユングとの共著の論文の意味は、要するにこういうことだった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み