第11話 『自然現象と心の構造』2

文字数 3,538文字

まず、前半のユングの論文から引用する(Google翻訳して修正)。

最初にユングは因果関係(原因と結果)だけでは、自然現象を説明することができないと述べている。物理学者のパウリも量子力学の時代に入り、古典物理学のような因果関係で物理現象を説明できないと述べていた。このあたりで二人の考えが似通ったようである。まず、因果関係のない共時性(シンクロニシティ)とは? で、ユングは路面電車のチケットの話をする。
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区別の基準なしに経験的な材料をふるいにかけることは不可能です。 すべての偶然の出来事の因果関係を調べることは明らかに不可能であるため、因果関係のない出来事の組み合わせをどのように認識すればよいのでしょうか? これに対する答えは、よく考えてみると因果関係が考えられないような非因果的な出来事が最も容易に予想される可能性があるということです。 例として、すべての医師にはよく知られている現象である「症例の重複」を挙げます。 場合によっては 3 倍以上になることもあり、カンメラー(名前)は「系列の法則」について語ることができ、その優れた例を数多く挙げています。 このようなケースのほとんどでは、同時発生する出来事の間に因果関係がある可能性はほとんどありません。 たとえば、トラムの切符にその直後に購入した劇場の切符と同じ番号が付いているという事実に直面し、その日の夜に電話がかかってきて、その際に再び同じ番号が電話番号として言及されたとき、 それぞれの出来事には独自の因果関係があるに違いないことは明らかですが、それらの間の因果関係は私にはありそうもないことのように思えます。 その一方で、偶然の出来事は非周期的なグループに分類される傾向があることを私は知っています。そうならなければ、定義上偶然を排除する周期的または規則的な出来事の配置しか存在しないからです。
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で、ユングが「結論」として何を言いたいか。最後の「結論」の章から。「結論」の最初に、共時性(シンクロニシティ)は確立した理論ではなく抽象的であることを認めている。さらに、この「結論」の章自体が非常に長くて、どこが一体結論の結論か分かりかねるが、読み上げを聞いてあっと思ったところがある。

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共時性の原理には、身体と魂の問題を解決するのに役立つ可能性のある特性があります。 何よりも、精神物理学的並行性を解明する可能性があるのは、原因のない秩序、あるいはむしろ意味のある秩序の事実である。 共時的現象の特徴である「絶対的知識」、つまり感覚器官を介さない知識は、自立した意味の仮説を支持し、あるいはその存在を表現することさえある。 そのような存在形態は超越的でしかあり得ません。なぜなら、未来または空間的に遠い出来事の知識が示すように、それは精神的に相対的な時空間、つまり表現不可能な時空連続体に含まれているからです。
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うーん、むずい…わかったっような、わからないような。精神物理学的並行性psychophysical parallelismというところで、ユングは心理学と物理学の類似性を感じているのか?

次は「結論」の最後のパラグラフです。

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これらの理由から、空間、時間、因果関係と並んで、共時現象を自然現象の特別なクラスとして理解することを可能にするだけでなく、偶然性を部分的に普遍的な要素として捉えるカテゴリーを導入する必要があるように私には思われます。 永遠の昔から存在しており、部分的には、時間の中で起こった無数の個々の創造行為の合計として。
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ユングは物理学者のパウリにも影響され、アインシュタインや量子力学についても聞いていたのだと思う。「因果関係」は確かに大事だが「共時性(シンクロニシティ)」も部分的に考慮する必要があると思っている。ユングはヨーロッパに限らない世界の神話、中世の錬金術、各種の重要なシンボルを基礎に研究した。その中に共時性(シンクロニシティ)もあり、考慮するに値すると考えていたようだ。

で、いろいろグルグルしたところで、手元の『デジタル大辞泉』で「シンクロニシティ」の説明を読んでみると

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シンクロニシティ【synchronicity】
虫の知らせのような、意味のある偶然の一致。心理学者ユングが提唱した概念。共時性。同時性。同時発生。
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と書いてある。あ、虫の知らせか。日本人にわかりやすい説明だ。

で、シンクロニシティと聞いて思い浮かぶのは何ですか? スティングにそういう名前のアルバム/曲があった。昔は歌詞を引用するとJASRACに追い回されるイメージがあったが、著作権の関係か、スティングの曲の歌詞がネットにあった。このアルバムには「Every Breath You Take」があったと思うが、その頃シンクロニシティはまったく自分の範囲外であった。
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https://denihilo.com/synchronicity-i/
歌詞和訳 The Police – Synchronicity I
1983年発表の第5作アルバム Synchronicity の開始曲。

(このジャケットはデジタルリマスター版のようです)

(Sting)
With one breath, with one flow
You will know
Synchronicity
呼吸ひとつで、流動ひとつで
分かるだろう
シンクロニシティが

A sleep trance, a dream dance
A shared romance
Synchronicity
眠りのトランス、夢のダンス
みんなのロマンス
シンクロニシティ

(chorus)
A connecting principle
Linked to the invisible
Almost imperceptible
Something inexpressible
Science insusceptible
Logic so inflexible
Causally connectible
Nothing is invincible
繫がりの原理
見えぬものにリンク
殆ど感知不能
名状し難いもの
科学も容れぬ
実に不動の論理
繫がる因果
堅固なものなど無い

If we share this nightmare
We can dream
Spiritus mundi
この悪夢を共有しているのなら
世界の霊魂を
夢見る事もできる

If you act, as you think
The missing link
Synchronicity
思考のままに行動しても
その関連は途絶える
シンクロニシティ

→(chorus)
We know you, they know me
Extrasensory
Synchronicity
我々は君を知っている、彼らは私を知っている
超感覚の
シンクロニシティ

A star fall, a phone call
It joins all
Synchronicity
流れ星、電話の呼び出し
全ては繋がっている
シンクロニシティ

→(chorus)
It’s so deep, it’s so wide
Your inside
Synchronicity
実に深く、実に広い
人間の内面
シンクロニシティ

Effect without a cause
Sub-atomic laws, scientific pause
Synchronicity…
原因の無い結果
原子核内の法則、科学の休止
シンクロニシティ

(不動の論理…ユングはそうは言ってないけどねえ…スティングかっこいい…惚れ直しました)
トラムの切符にその直後に購入した劇場の切符と同じ番号が付いていて、その日の夜に電話がかかってきて、その際に再び同じ番号が電話番号として言及されたら…なかなかかっこいい小説の出だしだ。


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