母ちゃんのお薦め作家・水上勉 編

文字数 1,801文字

啓太、今から調度2017日前の御前が小学校3年生の時の秋に、母ちゃんが休暇が貰えて、お前は小学校を ずる休みして、京都に旅行に行ったのを覚えているかい?
何が ずる休みだよ!

学校からチャンと、休みの許可を貰ったよ。


その京都旅行と、今回の小説紹介と、何か関係が在るの?

啓太、その時、最初に行った京都の観光名所の御寺を覚えているかい?

京都旅行に行ったのに、清水寺も金閣寺も銀閣寺も行かないで、最初から名前の聞いたことが無い御寺だったからね、反対に良く覚えているよ。

相国寺 瑞春院(ずいしゅんいん)だよ。

よく覚えていたじゃないか。

その瑞春院の門の前の看板に、なんて書いて在ったかも、覚えているかね?

瑞春院の門の前の看板には、「雁の寺」って書いて在ったよ。

水上勉が直木賞を取った小説、「雁の寺」の名前が掲げて在ったよ。


京都旅行に行く前に、水上勉の「雁の寺」の本を母ちゃんが持って来て、強制的に読まされたから、相国寺瑞春院と等持院と雁の寺がセットに成って覚えているよ。


だけど母ちゃん、この水上勉小説「雁の寺」は、小学生3年生が読んでも、良い本だったの?

水上勉は、若き時代に僧侶を目指して、京都の等持院や相国寺で修業をしたんだよ。

「雁の寺」は、その時の事が背景に成って作られた小説だよ。


水上勉の「雁の寺」は、僧侶の乱れた性行為の描写を鋭く(えぐ)った直木賞を取った作品だよ。そんな厭らしく素晴らしい小説でも、性描写が激しいからね、小学校2年生や小学校4年生は読んじゃダメなんだよ、だけど小学校3年生は読んでも良いんだよ。



なんで、小学校2年生と4年生が読んじゃダメで? 小学校3年生だけが読んで良いんだよ?
小学校三年生は省略して言うと、小三さんだよ。

だから、小学三年生だけが称賛(しょうさん)小三(しょうさん))されたんだよ。

    何それ?

  訳が解らないよ!?

啓太、母ちゃんの大好きな水上勉は、(すご)い小説家だよ。
水上勉が、凄い小説家って?
水上勉はね、「雁の寺」や「五番町夕霧楼」作品で、僧侶たちの女性関係を赤裸々に描写して、仏門界から追放されたから、素晴らしくて凄い小説家なんだよ。
仏門界から追放や波紋されて、何処が凄いんだよ!?

破門や追放を恐れずに、書きたいことを描写したから、凄いんだよ!


それから、水上勉のもう一つの代表作「飢餓海峡」に対する、水上勉の姿勢も、母ちゃんは凄いとおもったよ。
「飢餓海峡」作品が凄いって、評価の事を、言っているの?
違うよ、作品の良さや面白さや凄さは、読めば判る事だよ。


母ちゃんが言う、水上勉の凄いと言うのは、この「飢餓海峡」は推理小説として、評判に成ってヒット作に成ったんだよ、にも拘らず、水上勉は、それを好しとしなかったんだよ。


これから、推理小説の超売れっ子作家に成れる可能性は、十分に在ったのに、水上勉は推理小説に虚しさを感じて、推理小説を書かない事を手記で宣言したんだよ。

以降、母ちゃんが読んだ本の中では、「銀の庭」以外は、たぶん、推理小説は書かれていないよ。


母ちゃんは、世間の流行に媚びずに、自分の姿勢を貫こうとする水上勉は、凄いと思って作品を読んだよ。

じゃ母ちゃんの、今回、水上勉の推奨作は、「雁の寺」と「飢餓海峡」の2作品という事で好いんだね。
違うのよ、推奨作品は、他の2作品なのよ。


母ちゃんは、水上勉の本が大好きだから、「越前竹人形」とか「金閣炎上」とか「五番町夕霧楼」とかも推奨作にしたいけど。水上勉の作品は仏教界の事が書かれた本が多いから、阿弥陀様に決めて貰ったんだよ。母ちゃんが紙に書いた阿弥陀くじで、「フライパンの歌」と「弥陀の舞い」の2作品が、水上勉の推奨小説に決まったよ。



「フライパンの歌」と「弥陀の舞い」って、ドンナ本なの?
それは、啓太が実際に読んで判断して欲しいけど、少し言うとね、「フライパンの歌」は、水上勉のデビュー作と言っていい作品で、小説家に成る前に自分に甲斐性がなくて、奥さんに子供を置かれたまま逃げられた後の、貧乏生活を描いた物語だよ。暗い話だけど、何処か風情が在って面白くて、一気に読めた記憶が在るんだよ。


「弥陀の舞い」はね、美しい女性との儚い愛の描写が素晴らしくて、心に残った作品なんだよ。


母ちゃんは、叫ぶよ!


水上勉作品は、良い作品が多いから、イッパイ読みなさい!


「フライパンの歌」と「弥陀の舞い」も、読みなさ~い!





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