純文学作品、嫌な人物像

文字数 2,411文字

今回から、しばらくの間、純文学作品の紹介だよ。


母ちゃんが勝手で(台所で)読んだ、思想の自由に基づいた、選りすぐりの純文学作品を紹介するからね。


純文学作品は、絵本とは違うからね。

啓太が読むのには苦労するかも知れないけど、難しい言葉や漢字は飛ばしても好いから、読んだ方が良いよ。


毎日の夕食が美味しく食べれなくなるから、紹介した作品は読んだ方が、身の為だよ。


何を訳の解らない事を言っているんだよ!

読むんだったら、難しい漢字や言葉は、辞書を開きながら読むよ。


それに純文学なんて、面白く無さそうな本だったら、読まないよ。

母ちゃんのパワハラに負けていたら、命が幾つあっても、足りなくなるからね。

おまえ、(たくま)しくなったじゃないか。

好い度胸じゃないか?

母ちゃんの御蔭だよ。


その(たくま)しさなら母ちゃんの推奨する本を読まなくて、お前の夕飯の御飯とおかず、だけが、凄く不味(まず)く成っても如何(どう)って事ないね。


啓太、母ちゃんの、お前の夕飯の御飯とおかず だけを、凄く不味(まず)くする行為を、地球の家庭では、良い(いや)がらせって、言うのかも知れないんだよ。


どこが! 僕の御飯とおかず だけを、不味くすることが! 良い厭がらせなんだよ!!


母ちゃん、そんな嫌がらせの言葉を使ってまでも、僕に、本を読ませたいのかよ?!

そういう事、かね。

母ちゃんも(いや)がらせの年齢に生って来た、みたいだからね。


という事で、啓太、母ちゃんが今回 最初に紹介したい純文学作品は、厭がらせなんだよ。

紹介したい純文学作品が、嫌がらせって? 何を言っているの?
母ちゃんが今回、最初に紹介する純文学作品は、丹羽文雄の「厭がらせの年齢」という本なんだよ。

丹羽文雄の「厭がらせの年齢」?


丹羽文雄って、他に「顔」とか「鮎」って言う代表作が在る、昭和初期の古い作家のこと?


その頃には、坂口安吾や椎名鱗造とか有名な純文学作家が居たんだろ?

お前、結構、知っているじゃないか?

蔭で日本文学の勉強もしていたんだね?

何を言っているんだ。

母ちゃんが、教えて呉れたんじゃないか。


それで、その丹羽文雄の「厭がらせの年齢」っていう本の、何処が良いの?

御婆ちゃんのキャラが良いんだよ。

性格の悪い言動の悪い、御婆さんが出て来て、飛んでもない厭がらせをするんだよ。

母ちゃんよりも言動の悪い主人公だよ。

だから、この本をお前に勧めたいんだよ。

何を言っているんだ。

そんな性格の酷い御婆さんが主人公の本なんて、僕は読まないよ。


そうかい、それは、残念だね。

母ちゃん今回、私が勧める2冊の本を啓太が読んだら、来月から お前の小遣い1,000円、値上げしようと思っていたのにねぇ。

それにねぇ、読まないと反対に、値下げに成っちゃう可能性も在るんだよ。

物価高騰のおりに、お前の生活が更に苦しく生ってしまうかも知れないんだよ、読んだ方が身のためじゃないかね。

それって、買収じゃないか?!

だけど、2冊の小説を、チャンと読んだら本当に、来月の小遣いを、1,000円も値上げして呉れるの?


チャンと読んだら、チャンと値上げするよ。
まさか、来月分の小遣いだけの、値上げじゃないよね?
大丈夫だよ。

少なくても、後、2年と7カ月は、値上げした小遣い基準にして、お前の勉強の努力と本読みの努力の成果を加味して、更なる値上げを考えて遣るよ。

母ちゃんは何時も言っているけど、成功とは努力の結果なんだよ。

母ちゃんは、努力なしの成功なんて認めないけど、努力成果の報酬はチャンと払うよ。

解ったよ母ちゃん、小遣いを上げてくれるんなら、其の2冊の純文学作品をチャンと読むよ。

それで、もう1冊の作品は、何なの?

お前に読んで欲しいモウ1冊は、4年前に芥川賞を取った今村夏子の「むらさきのスカートの女」だよ。

この作品も、性格の良くない酷い女性が主人公の、素晴らしい本なんだよ。


読んで欲しい純文学作品は、丹羽文雄の「厭がらせの年齢」と今村夏子の「むらさきのスカートの女」だよ。

母ちゃん、何で、登場人物の性格や言動が酷そうな、嫌な小説を重ねて、僕に紹介して来るんだよ!

純文学作品には、モット良い人達が登場する、心温まる小説が在るんじゃないのか?

何で、嫌そうな主人公が出て来る小説ばかりを、僕に勧めるんだよ?!

それはね、素晴らしい作品だからだよ。


酷い性格の人物たちで、ストーリ展開も倫理を外れたような小説は、お前や多くの読者は毛嫌いする感覚が在るけど、そんな作品が専門的な人たちから評価されるのは、何かが在るからだよ。

読み進めて行けば解るよ、多くの人は、嫌だと思っていた空間に必ず引き込まれて行くよ。

この二作品は純文学だと言っても、難しい言葉や芸術的な言葉が並んで引き付けては、いないよ。

簡単な言葉で、凄い表現力の描写力や性格付けで、読者を衝撃的な世界に、引きずり込んて行くよ。


今村夏子の「むらさきのスカート女」は、タイトルの紫が、ひらがなに成っている事と、むらさきとはどういうイメージを与える色なのかを、考えながら読むと良いかもしれないよ。


主人公が、思いやりが在る良い人のストーリ展開で、ほのぼのした感動を生む作品も、母ちゃんは好きだけど。

こう言う性格の悪い嫌な人間たちを上手く料理していく、素晴らしい衝撃的な作品も、母ちゃんは好きなんだよ。


だから、啓太、読みなさい!


母ちゃん、小遣いの値上げも魅力だけど、この2作品も魅力的に思えて来たから、読むよ。


だけど母ちゃん、僕が読んでコノ2作品が、必ずしも好いと思うかは判らないよ。

酷い作品だと思うかも知れないよ。

それでも良いの?

啓太、お前、賢くなって来たじゃない。


好かった悪かったとかの読後の感想は、啓太自分自身に湧き出た感情で決める事だよ。


だけど啓太、もっと大事な事はね、先ず多くの本を読む事だよ!

判断は、その後だよ。


母ちゃんは、上品に叫ぶよ!


もっと、イッパイの本を、読みなさ~い!!



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