新田次郎と吉村昭

文字数 1,596文字

母ちゃん、最近の、小学校4年生の時に、富士山の頂上まで、清く正しい登り方? で、辿り着いたんだよ。
何が?!、母ちゃんが小学校4年生の時が最近なんだよ?  

母ちゃんが小学生だった頃の学校って? 寺子屋時代じゃないの?

それに小学校4年生で、 富士山の頂上まで本当に登ったの? 清く正しい登り方って、何なの?

母ちゃんの小学生時代は、江戸時代じゃないわよ!

つい最近の時代、昭和だよ。

清く正しい、富士山の上り方っていうのは、海抜0メートルから頂上まで、人間の足だけで登る事だよ。

バスやヘリコプターやUFOを使って、富士山の頂上に行っても、清く正しい富士登山とは言わないんだよ。

母ちゃん、それはソレハ、か弱くて可愛かった少女の時に、沼津の千本浜っていう海岸に足を浸けてから、3日間かけて父ちゃんと一緒に富士山頂に、人間の足だけを使用して、登ったんだよ。

なにそれ? 母ちゃんの言い回し、何か可笑しくないか?

人間の足だけ使用して登ったって、如何いう事なの?

人間の足だけを使用して登ったっていうのは、馬の足もヘビの足もクマの足も使わなかったって言うことだよ。だけど、小学校4年生の時の少女の母ちゃんは、クマのような人間の足に助けて貰って、富士山の頂上まで上がったんだよ。
クマのような人間の足に助けて貰ったって⁉ 何を言っているの?


クマのような人間の足って、富士山に途中から登れない人を背負子に乗せて頂上まで登っていく、強力さんの足の事だよ。

母ちゃんはその時、小学生4年生の可憐な少女だったんだよ。

太陽が照りつけるアスファルトの道路を一日中、父ちゃんと歩き続けて、富士山の麓の御殿場の旅館に夜遅くに辿り着いたけど、足は血豆だらけに成っていたんだよ。

次の日の朝に、旅館の女将さんの計らいで、強力さんを呼んで呉れて、母ちゃんは強力さんの背負子に背負われて、富士山の頂上まで辿り着いたんだよ。

その時の強力さんの名前が勝又さんて言う人で、顔は怖かったけどトテモ優しくて好い人だったんだよ。

だから、母ちゃんの息子の お前は絶対に、新田次郎の直木賞小説「強力伝」を、読まないとダメなんだよ。


如何いう理屈なんだ!?

だけど母ちゃん、新田次郎の「強力伝」の主人公の強力さんの名前って、勝又じゃなくて確か小宮だった筈だよ。僕は、母ちゃんに言われて新田次郎の「強力伝」は読んでいるからね。

えっ?! そうだったかね…?


そうだよ!


勝又って名前の強力さんが出て来るのは、新田次郎の「芙蓉の人」だったよ。


富士山の麓の御殿場市は、かつまた、って名前の人が多くいて、良い人が多いんだよ。

だから、みなさん、新田次郎の「強力伝」と「芙蓉の人」を読んで下さい。

母ちゃん、そんな理由で、新田次郎の作品を薦めているの?

モット深い理由はないの?

理由なんて如何でもいいんだよ。

母ちゃんが面白く読めて心打たれた作品は、人類共通の好い本なんだよ。

だから、新田次郎と同じように、史実や事実を基に面白くて一気に読める作品を書く、吉村昭の作品も紹介するよ。

吉村昭って? 有名な女流作家(津村節子)を奥さんに持つ、吉村昭の事?
そうだよ。

奥さんが芥川賞作家だから、母ちゃんが勧める吉村昭作品は、太宰治賞を取った「星への旅」と、文部科学大臣賞を取った「破獄」の2作品かね。

もう薦める理由は、如何でもいいけど。

僕は、吉村昭の「星への旅」も「破獄」も読んだことが無いから聞くけど。

その2作品は、本当に良い作品なの?

母ちゃんが読んで、好かった本は、良い本に決まっているじゃないの。


人類の法律では、好い本は、母ちゃんが定める事に依り決定するって、おまえの婆ちゃんが言ったんだよ。

だから、新田次郎の「強力伝」、「芙蓉の人」と、吉村昭の「星への旅」と「破獄」は、面白くて心打たれて一気に読める好い本に決定したんだよ。


史実を克明に描き、一気に読ませる、新田次郎と吉村昭の本、読んで下さ~い!

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