勇者はつらいよ、のコーナー
文字数 6,662文字
(なんだかレトロな映画っぽいBGMが流れる)
というわけでね、ハッシー君は今までずっと魔王を倒す為に旅を続けてきたんだけど、やっぱり辛かった事ってたくさんあったと思うんだ。
だからその辛い思い出を吐き出して、少しでも楽になってもらえたらなっていう気持ちもあってこのコーナーを作ってみたよ。でも全部お話ししてもらおうとなると時間が足りないから、1位から5位くらいまでを紹介してもらおうかな。
だからその辛い思い出を吐き出して、少しでも楽になってもらえたらなっていう気持ちもあってこのコーナーを作ってみたよ。でも全部お話ししてもらおうとなると時間が足りないから、1位から5位くらいまでを紹介してもらおうかな。
そうですね。辛い事と言えば……そもそもまずこの世界に召喚された事ですよね。文明的な社会から中世ヨーロッパ水準の世界に投げ出されて、右も左もわからない状態でしたから。幸い、召喚した賢者たちが色々とこの世界について教えてくれましたが。
大体敵を狩ってそのドロップアイテムを売ってですね。ロンデミオ王国の敵は動物系が多いので、毛皮を売ったり、内臓を売ったりして稼ぎました。ホワイトグリズリーが一番稼ぎが良くて、毛皮も内臓も高値で売れるので積極的に狩りましたが、さすがに強くて1日2匹くらい狩るのが限界でしたね。まあそれでも1匹で3000ゴールドくらいにはなるんですが、クマの方もそうそう出るわけでもないので中々しんどかったです。
え、ちょっと待って。100人召喚してここまで来れたのがたった1人なんだけど。禁術が聞いてあきれるよ。
それにその召喚された人々ってたどり着けなかった場合、結局どうなってるんだろうね。元の世界に帰れてるんだろうか。
それにその召喚された人々ってたどり着けなかった場合、結局どうなってるんだろうね。元の世界に帰れてるんだろうか。
見かねたのか、最初に仲間になってくれたのがイリーナでした。その後酒場を出て街を散策していたら演説をしていた僧侶が居たんです。聴衆が全然居なかったですが。その彼がパウロでした。パウロは僕が勇者だと知るなり、有無を言わさず仲間になりましたけど。彼なりの考えがあってのことだとは思いますけどね。
あーあの欲望にまみれた破戒僧ね。彼の事だから多分勇者の冒険を成功させたら一躍有名になれるとか多分そんなところじゃないかな? 仲間になったのは。
イリーナはなんかこう、見かねたというより君の事を一目ぼれしたんじゃないかと思うけどね。
イリーナはなんかこう、見かねたというより君の事を一目ぼれしたんじゃないかと思うけどね。
マオウさん、仲間を募るのってホント大変なんですよ。最初に酒場で仲間を募った時、誰も僕に近寄らずに薄ら笑いを浮かべてた人達の顔、あの顔を一度見てみてくださいよ。きっと自分が惨めに思うか、それともこいつらいつか絶対ぶっ飛ばすって思うかのどちらかですから。
ああうん、なんだかそれはわかる気がするよ。
レベルが低いうちはどうしても頻繁に宿屋に帰ったり、回復アイテムを一杯持ったりせざるを得ないからね。特に毒や麻痺みたいな状態異常は喰らったら解除アイテムがないと一気に全滅の危険性があるし。
レベルが低いうちはどうしても頻繁に宿屋に帰ったり、回復アイテムを一杯持ったりせざるを得ないからね。特に毒や麻痺みたいな状態異常は喰らったら解除アイテムがないと一気に全滅の危険性があるし。
パーティが集まってから最初の一か月くらいはずっとヴァルディア王国の中から出れませんでしたね。バンディットが楽に倒せるようになるレベル10くらいになるまで、夜はフィールドに出ないで街に戻ったりとあまり効率も良くなかったです。
グリーンスライムやマントラップみたいに弱い敵ですかね。たまにコボルトが出るんですがそれは2匹までならなんとかなりますが、3匹以上になると誰かが死ぬ可能性が出るのでその時は逃げたりしてました。ごく稀に出てくる宝石虫は癒しでしたね。これを生きたまま捕獲するとマニアが高く買い取ってくれるんで、とにかくお金も無かった序盤には凄く有難かったですよ。
一か月でようやく僕らの平均レベルが18に達したので、そろそろ周辺国に行っても大丈夫だろうと隣国イストニア皇国に行ったのですが、そこは実はヴァルディアよりもフィールドの敵が弱いと知って膝の力がガックリ抜けましたね。その分夜に出てくる敵が厄介なんですけど。
それと即死魔術や奇蹟を使って来る魔物が非常に多かったのが嫌らしいですよね。こっちは一人なのに。それ以外にも猛毒や麻痺、混乱など状態異常ばっかり持った魔物が目白押しで、耐性を完璧にしてないとこのダンジョンは踏破できないですね。
それはまあ、死んだ所で教会にリスポーンするだけですからね。それよりもこの世界で冒険者として生きる為の最低限の腕前を付けるまでが本当にキツかったんですよ。なんせ僕は、元の世界では争いとは全く無縁なただの学生でしたから。
まずは魔物と戦う為の剣術の訓練ですか。木刀での模擬戦とはいえ、戦い自体はガチの殴り合いでしたので骨折や青あざが出来るのは日常茶飯事です。と言っても、回復の奇蹟はいくらでもかけてもらえるので日の出からお昼まで延々と続けさせられましたが。
昼ごはん食べた後は体力強化のために長距離走や筋トレしたりですね。僕、元々運動はあまり得意じゃなかったのでこの辺りもしんどかったです。夕方になったら今度は魔術や奇蹟の初歩的なお勉強ですかね。これはまあそこまでしんどくは無かったですが。
最後はサバイバル訓練ですかね。食料が不足した時や、過酷な環境を生き延びる為だっつって山に放り出されて一人で一週間山を生き延びてみろって。ついこないだまで都市で生きてた人間をいきなり山に放り込むとか、僕を殺す気かと本気で恨みましたね。
一応サバイバルマニュアルみたいな本を持たされたのですが、これがまた役に立たない。毒キノコ食べちゃったり、沢に落ちたりと散々でしたよ。まあ、後で死にかけたり死ぬ事なんか山ほどあるわけですが、この時に比べれば屁でもないですね。
いや、全く。そもそも旅は食料を買い込みますし、野宿するときは結界魔法陣張って安全で快適な空間作れますし。山で野営なんて危険すぎて仲間も嫌がりますしね。僕だって山みたいな魔物がうろつく場所で野宿なんかしたくないですよ。万が一仲間が死んで僕一人になったとしても、空間転移のスクロールで真っ先に街に戻ります。ダンジョンでも脱出のスクロール使いますよ。