モンスターデザイン工房と勇者パーティの宣戦布告
文字数 6,849文字
ゴールドスタチューもそうだけど、キラーラビットやグレーターデーモン、ニンジャマスターとかもね、冒険者をどうやってぶち殺そうかとその一点に絞られた、実にストイックなものになりがちだよね。
でもそれじゃやっぱりつまらないよね。何より面白みがない。
そういう訳で、この番組を聞いてるようなリスナー諸君なら何か面白いアイデアを閃いてくれるんじゃないかと思って作ったんだ。
でもそれじゃやっぱりつまらないよね。何より面白みがない。
そういう訳で、この番組を聞いてるようなリスナー諸君なら何か面白いアイデアを閃いてくれるんじゃないかと思って作ったんだ。
そんな父さんが精力を注いで作り上げた最高傑作の魔物が、アシュラ像とかいう物らしいね。あれは一度だけ僕も動いている所見たけど凄まじいよ。
人間達が崇拝している宗教の神? をモチーフに作ったらしいけど、アシュラとか言っている割には千手観音かよってくらい手があって、武器を何本も持てる上にどの腕も干渉しないように上手く作られている。
見上げる程の巨体の癖に素早さが尋常じゃなくて、盗賊や忍者ですらも先手を取れない。1ターンで最大8回攻撃してくる極悪な物理主体の魔物なんだよ。
しかも像を作って仮初めの命を吹き込む魔法生物だから、像さえ作ってしまえばいくらでも補充が利くのが素晴らしいんだよね。
問題はその像を作る所なんだけど。
人間達が崇拝している宗教の神? をモチーフに作ったらしいけど、アシュラとか言っている割には千手観音かよってくらい手があって、武器を何本も持てる上にどの腕も干渉しないように上手く作られている。
見上げる程の巨体の癖に素早さが尋常じゃなくて、盗賊や忍者ですらも先手を取れない。1ターンで最大8回攻撃してくる極悪な物理主体の魔物なんだよ。
しかも像を作って仮初めの命を吹き込む魔法生物だから、像さえ作ってしまえばいくらでも補充が利くのが素晴らしいんだよね。
問題はその像を作る所なんだけど。
そうだね。やっぱり複雑に、繊細にするほどアシュラ像は強くなる。
簡略化すると量産しやすくなるけど、できる動きが限られてしまい動きが読みやすくなってしまうって言ってたな。
結局作れたアシュラ像は10体にとどまったが、長い戦いの果てに9体は壊されてしまった。1体だけ残ったけどメンテナンスできる職人も引退してしまって技術が途絶えてしまった。勿体ないよね。
その技術の粋を詰め込んだ最後の1体は魔物ミュージアムの中に保管されているよ。
簡略化すると量産しやすくなるけど、できる動きが限られてしまい動きが読みやすくなってしまうって言ってたな。
結局作れたアシュラ像は10体にとどまったが、長い戦いの果てに9体は壊されてしまった。1体だけ残ったけどメンテナンスできる職人も引退してしまって技術が途絶えてしまった。勿体ないよね。
その技術の粋を詰め込んだ最後の1体は魔物ミュージアムの中に保管されているよ。
――そうかな? 結構様々なのが居ると思いますけどね。
ハエトリソウが餌を求めて歩行するようになったマントラップ、そこから進化して人の頭をまるごとかぶりつくようになったヘッドイーター。毒の霧を吐くグレイブポット。ちょっと例を出しただけでもこれだけいるし、更に人面樹さんやドリアードみたいなのも居ますしバリエーション豊富ですよね。
まあいいや続き読みます。
ハエトリソウが餌を求めて歩行するようになったマントラップ、そこから進化して人の頭をまるごとかぶりつくようになったヘッドイーター。毒の霧を吐くグレイブポット。ちょっと例を出しただけでもこれだけいるし、更に人面樹さんやドリアードみたいなのも居ますしバリエーション豊富ですよね。
まあいいや続き読みます。
――あー、砂漠はね。そもそも水が少ないから水をより必要とする植物系にとっては厳しい環境だろうね。植物に限らず動物や虫も砂漠に適応できたものしか居ないし。生物の匂いがまずないよね。
魔物を置くまでもなく、人間達も過酷な環境によって乾いていく。
魔物を置くまでもなく、人間達も過酷な環境によって乾いていく。
それで、砂漠地帯に自生しているサボテンという植物をベースに魔物を作る事を提案します。サボテンは肉厚な茎を持ち、砂漠に生えているだけあって乾燥に非常に強いのです。一番の特徴として「針」状になった葉を無数に生やしているという点が挙げられます。これはまさに武器としてうってつけではないでしょうか。
針をもっと伸ばせるように改良し、人間の首筋や心臓を突き刺すような針を持った「吸血サボテン」という魔物を作ったらどうかと。
使うサボテンの種類は実をつけ、茎も食べられるものにすると人間が水分補給の為に寄ってくるはずです。そこをズドンと一刺し! これはイケるはず。
是非とも考慮の程よろしくお願いします。
使うサボテンの種類は実をつけ、茎も食べられるものにすると人間が水分補給の為に寄ってくるはずです。そこをズドンと一刺し! これはイケるはず。
是非とも考慮の程よろしくお願いします。
――かなり良く練られたモンスターの案だね! マオウかなり感激しました!
砂漠地帯を通る冒険者は決して多くないとはいえ、魔物の配置はやはりしておくに越したことはないなと改めて思いなおしました。
という訳で、我々はこのアイデアをもとにサボテンの魔物を既に作りました!
今はテストという事で、試しにとある砂漠地帯に何体か置いているんだけど、首尾はいかがかなユミルさん?
砂漠地帯を通る冒険者は決して多くないとはいえ、魔物の配置はやはりしておくに越したことはないなと改めて思いなおしました。
という訳で、我々はこのアイデアをもとにサボテンの魔物を既に作りました!
今はテストという事で、試しにとある砂漠地帯に何体か置いているんだけど、首尾はいかがかなユミルさん?
サボテンの針ですが、蚊の口の構造を参考にした所、吸血能力が飛躍的にアップしました。また移動できるように根っこを改良して歩行できるようにもしました。これで冒険者が見つからない時でも自ら探すことが可能になります。
まあ、しょうがないか。
そういえばサボテンで僕はもう一つ案を思いついたよ。
もっと形を人型に近づけて、手足をつけて、針を嵐のように飛ばせるようにするんだ。どうだい、これはかなり良いアイデアだと思わない?
そういえばサボテンで僕はもう一つ案を思いついたよ。
もっと形を人型に近づけて、手足をつけて、針を嵐のように飛ばせるようにするんだ。どうだい、これはかなり良いアイデアだと思わない?
謎の反対を喰らってしまった。納得いかないが仕方ない。
そういう訳でして人面樹さん、新たな魔物のデザイン案は採用です!
おめでとうございます!
また何か思いついたら送ってください、よろしくお願いします。
そういう訳でして人面樹さん、新たな魔物のデザイン案は採用です!
おめでとうございます!
また何か思いついたら送ってください、よろしくお願いします。
他の施設と違い、ここには戦闘に長けた魔物がおりません。元々ここを襲う勇者たちも居なかったので、これまではそれで良かったのです。
しかし、このたびの勇者パーティーに魔術を究めようとする魔術師が居ると聞き、ここに来るかもしれないという危惧を抱きました。
しかし、このたびの勇者パーティーに魔術を究めようとする魔術師が居ると聞き、ここに来るかもしれないという危惧を抱きました。
本に本が好きな魂を定着させ、本を奪おうとする者どもに襲い掛かる魔物を仕立てるというのはどうでしょう。
開いた本のページには定着させた魂の顔を、そして手を付けます。
また定着させる魂は本好きでなければなりません。でなければ本と一体化などできようもない。
開いた本のページには定着させた魂の顔を、そして手を付けます。
また定着させる魂は本好きでなければなりません。でなければ本と一体化などできようもない。
彼らは普段は図書館の本を管理する司書となり、侵入者の気配を感知したら警備員に早変わりするのです。これは我ながら一石二鳥のアイデアだと思います。
名前も考えました。「アポクリファ」とします。
いかがでしょう。是非とも採用されると我々も嬉しいです。
名前も考えました。「アポクリファ」とします。
いかがでしょう。是非とも採用されると我々も嬉しいです。
はい。よく働いているかどうかはわかりませんが、今は机の上に本を山積みにして読みふけっていますね。自分で本を片付けたり、図書館の中を進んで掃除しているようです。あとは侵入者が来た時にどう動くかを見たいですね。
うんうん、だいぶいいですね。
アポクリファは基本的に空を飛んで移動するみたいだね。
ま、固着してる魂は大抵賢者や魔術師だろうし、浮遊移動の魔術くらいは使えて当然か。
試作したアポクリファの働きぶりも中々良好みたいだし、これから量産していくと司書たちには伝えよう。きっと喜ぶぞ。
アポクリファは基本的に空を飛んで移動するみたいだね。
ま、固着してる魂は大抵賢者や魔術師だろうし、浮遊移動の魔術くらいは使えて当然か。
試作したアポクリファの働きぶりも中々良好みたいだし、これから量産していくと司書たちには伝えよう。きっと喜ぶぞ。
というわけで図書館の司書さん、どうもありがとうございました。
また新しい魔物を思いついたらこちらに送ってね。
……うん、ここまで二つ紹介したけどどっちもガチな部類のアイデアだね。
必要に迫られたものと真面目に考えた奴だからかな。
また新しい魔物を思いついたらこちらに送ってね。
……うん、ここまで二つ紹介したけどどっちもガチな部類のアイデアだね。
必要に迫られたものと真面目に考えた奴だからかな。
『ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』
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ザー、ザガッ、ザザッ……ピュイーン。
勇者様が夜中こそこそ何かやってるのが気になってな。様子を見てみたらこのラジオ? って変な道具で何かを聞いているじゃないか。ぶんどってアタシも聞いてみたらなんと大魔王が喋っているというから驚きだ。魔王軍の情報やら魔物の配置の話やら、アタシらにとっても色々と有用な情報を得られてそれはそれは感謝してるぜ、DJマオウ様よ?
ザー、ザガッ、ザザッ。ピシューン……。
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