あとがき

文字数 810文字

 最後までお読み頂き、ありがとうございます。この作品を書き始めた当初は、会食恐怖症をテーマにした短編小説を想定していました。しかし書き進めるにつれて、短編小説では会食恐怖症を克服する過程を表現出来ないと判断し、長編小説に変更しました。その甲斐あって自分なりの判断になりますが、思い描いていたことを創作出来たと思っています。
 僕が小学生の頃は、年号も昭和で平然と給食を残す人に対して、先生方は食べ終わるまで自由を許さない教育が平気で行われていました。給食後の掃除の時間でさえも、埃が舞う中で食べさせられていたのです。数名の女の子がそうした毎日をおくっていたと記憶しています。
 作中の中で由美子が会食恐怖症であることを主人公の聡に告白するシーンがありますが、その聡の台詞の中に「それはもう虐待の世界やな。その先生は酷すぎるし、教師になったらあかん人間やろ。目の前にいたら殴りたくなるな」という言葉がありますが、これは僕の本心でもあります。世の中には今もなお、そうした虐待の事象が繰り返されているのです。
 僕は実際に会食恐怖症の女性と食事をしたことがありますが、作中に表現していた通りに食事の際に手が震えていたり、周りの様子を見た瞬間に俯いたりしていました。その当時の僕は、会食恐怖症という言葉すら知らなかったのですが、そういうトラウマを持って生きていく辛さは計り知れるものではありません。
 恋愛要素を絡めつつ、会食恐怖症克服の第一歩として、聡と由美子の二人だけの空間であれば楽しく食事出来るシーンを描きました。その後の事は書いていませんが、果たして由美子は外食が出来るまでに克服することが出来たのでしょうか。
 僕の中では、あれだけの芯の強さを持っている由美子であれば、きっと聡と一緒に外食出来るまでに克服していることと思います。
 トラウマを持っている皆様に、どうか平穏に生きていけますようにと願っています。自分も含めて……。
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