3☆ミ

文字数 2,367文字

ひとしきり話し合ったところで、キリが無いとしてニックは本題に入ることにした。



時計の針は22時を指している。

魔の谷に足を踏み入れたのが17時だ。

流石に喋り過ぎていると思う。

すみません。

かみの捕獲法ですが。

どこにいますか?

ごめん。

喋り過ぎだね。

かみだね。

そいつは魍魎とも呼ばれているけど、なんていうかな。

キノコなんだよ。

分かるかな?

キノコ……。
何?

キノコならぼくはしょっちゅう身体から生えているよ!

あれがかみだっていうの?

こいつ……。

腐ってもみろくやな。

心の中のエイヨウを吸い取って寄生する生き物っていうか。

でも、これがあると憎しみが湧いて出て来るの。

ニクシーとも呼ばれているね。

駄洒落か?

水の妖精だよな?

邪霊だね!

邪精でもある。

キノコのことだったの?

パナケアというか。

本体は抜けた髪の塊みたいな感じだけど、それが気に宿ると、余剰エネルギーを吸い取ってキノコとして顕現するんよね。

外道 モウリョウ

また懲りずにメガテンネタを。

仕方ないだろう。

メガテンの巫覡が強いのが悪い。

あんたたちだって、ねえ?
うるさいな!

知らなかったんだよ!

勝手にスカウトされて、弱体化された状態で無理矢理戦わされて!

お前は呑気が過ぎる。

形質だけ置いて、さっさと退散すれば良かっただろう。

馬鹿真面目に労働に勤しんで。

どう見てもブラックの中のブラックだろう。

よく分かる。

ぼくもそうやって、散々食い物にされた!

個性がよく現れているようだ。

これは個性だよ。

能力差ではないからね。

わかったら返事をおし!

ふぁい。
ふぁい。
ふぁい。
躾が行き届いているな。

それで、早くかみを捕まえたいんですが。

お願いします。

教えてください。

捕まえたかみをどうするつもりだ?
クラスメイトにプレゼントします。

あなた達に害なす相手なので、悪い話ではない筈です。

本当か?

協力しよう。

そんなにアッサリ信じ込んで!

だからカモにされるんでしょ!

カモネギだ!

鴨だしだ!

大丈夫でしょう。

ちゃんと相手を見て言ってるよね?

シールックにいさん。

大丈夫よね?

どう見ても駄目だろう。

お人好しが過ぎる。

ぼくは騙し討ちは相手を選んで行いますので。

今回は騙す気はないです。

ダマスカスとかないですから。

ダマスカス包丁は漏れなく偽物だからね。

きみは本物の鋼の包丁だよね!

玉鋼を使ってる?

布都御魂剣です。
やべえのが出てきたな。
斎なのか。

毒はなさそうだ。

ただの社畜なので。
こら!

社畜なんて言葉を使うな!

勤労奉仕戦士と言え!

この奴隷根性が。
社畜でいいんじゃないか。

ほっこりしないから。

……全く話が進まない。

常に駄弁り続けてしまう。

何故だ。

ごめん、ごめん。

仲良すぎてね。

かみだね。

案内するよ!

神の塔に!

え。

塔に登るのは嫌だ。

無理。

時間が足りない。

なるほど。

じゃあ集めるんだね。

匂い玉を作ろうか?

得意だよ!

匂い玉?
金の匂いに集まってくるんだよ!

つまり上手い話さ!

それを濃縮したものを、匂い玉と呼んでいる。

ぼくは簡単に作れる!

何?

いつの間にこいつ。

犬ころのようだな。

なんで犬ころになるんだ?
犬畜生ってことよね。

つまり、いやらしい意味で使っているの。

煩悩の塊だから、スクナは。

??

犬はいやらしくないぞ。

厚い生き物だ。

真面目だねえ!

流石、カモネギだけあるよ!

カモネギは永遠に居合い切りしてな!

??

構わないが。

お前!

なんで!

全くもう。

カモネギならまだマシだ。

相手はトロピウスだから……。

トロピウスに罪はないだろ!

移動用として便利モノじゃないか!

あんたも大概ね。

兎に角、匂い玉よね。

どうやって作るの?

マロンちゃんでも使うかなぁ。
人体実験か?

それは良くない。

全く!

何も……分かっちゃいないようで分かっているな。

しかし、封印予定のヒューマノイドを……。

私は構わないけどね。

目的のものならすぐに出せるよ!

ほら!

このおバカさんのお人形でしょ!

そう言いながら、イシュタルは小さな1センチ程の大きさの少女の人形を手から取り出した。


彼女は黒髪の姿で、異国の制服を身に纏っている。

残酷過ぎる。

しかし、これをどうやって……。

うっ。

良心が痛む。

これを透し彫りのペンダントに入れておくんだ。

僕が蕾の魔法をかけるから!

涙が出て来た。

匂い玉なんて。

香り玉だよな?

酷い事をする。

奴らはなんて残虐なんだ。

仕方ない。

奴らの好みを存分に詰め込んだんだ。

……。

二度とこんなことはしたくない。

スクナヒコナは彼らの雑談を聞きながら、細工作業を続けた。


やがて完成品を手に、高々と皆に見せびらかす。

出来た!

名前は、モンだよ!

モンちゃん!

モン……。

もう。

本当に。

このままでは駄目だ。

勝利の女神が鉄の鉄拳を喰らわせるだろう。

ソフトカプセルのバリヤーに包んでおけ。

丁重に扱えよ。
分かった。

マロンちゃんを、水のソフトカプセルに包むんだね。

そうしてその上に透し彫りのレリーフを被せておく。

ほら、ちょっと匂いを嗅いでみて!

香り玉だよ。

こら!

スクナはなんてことを!

これを持っていると、モウリョウが集まってくるんだね。

この香りで?

まさか。

うっ。

なんか鼻に入った。

ニックは鼻に入ったナニカを無理矢理掴んで引きずり出すと、なんと長い髪の毛のようなものが出て来た。


顔を顰めながらバックパックの中からコーラの空き瓶を取り出すと、中に髪の毛のようなものを入れた。

コーラ?
違う。

これはかみを呼び寄せる用の罠だ。

コーラならほら。

ちゃんと綺麗で新しいものを持っているよ。

あげるよ。

皆さんにも。

コーラ!

瓶コーラ!

やった!

コーラはな……。

シールック、やる。

いいのか?

ぼくが2本飲んでも。

私のも、と言いたいけど、スクナにあげなくちゃ。

ごめんね。

本当に?

ぼくも2本飲んでいいの?

やったー!

ニックはかみを入れた瓶に丁重に蓋をし、毒と書かれた紙を貼り付けてバックパックにしまい込んだ。


四人の魔族はそれを見ながら、コーラについて話に花を咲かせていた。

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登場人物紹介

ニック

ヘタレ魔法使い。

パニィ

ニックにちょっかいを出す女の子。

ライム

ニックにラブレターを渡す謎のツンデレ。

シールック

影の人。

アーネトルネ

魔王の人。

イシュタル

闇のパピヨン。

スタアト

コビット族。スクナヒコナ。

スキムルーク

謎の爆美女。

解脱の姿

ガディスゼル

とりつくしまもなし

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