9☆ミ
文字数 2,055文字
授業が始まったが、魔族の四人組は全く気にすることもなく教室の後ろで駄弁り始めた。
彼らは魔法で音量調整をしている為、話し声が人間に聞こえる事はなかった。
その為、全くの遠慮もなく通常通りに振る舞う。
教室内の誰一人として彼らの存在に気付く者は無かったが、唯一ニックには感知できた為、内心ハラハラしながら教室の後ろをチラチラと覗いていた。
イシュタルは魔法のチョークで陣を描くと、真ん中にスクナヒコナを座らせた。
次の瞬間、スクナヒコナの身体から薄紫色の煙が噴き出した。
煙は少しずつ形を変え、女性型へと形取っていく。
教師に気付かれる前に、シールックは現れた女性の姿に魔法をかけた。
彼女はキョトンとした様子で教室全体を見回す。
スキムルークと名乗る女性は、瞬時に姿を消した。
彼女を見送り、スクナヒコナはホッと胸を撫で下ろした。
イシュタルとスクナヒコナのやり取りを聞いて、アーネトルネはピクリと眉を動かした。
大きな体躯を揺らし、そっと陣の前に立つ。
そう言いながら、アーネトルネはそっと陣の中心に向かった。
イシュタルはそれを確認してから、複雑に腕を組む。
次の瞬間、アーネトルネの前身からエメラルドグリーンの煙がモクモクと上がりだす。
まるで煙幕のように身体から煙が噴き出すのを、3人は信じられないような目で見つめた。
やがて、彼は少しずつ姿を変え、煙も同時に人型を形取っていく。
すぐさまシールックが早撃ちの魔法をかけ、現れた煙の何かの姿をかき消した。
彼女はキョロキョロしながら教室を見渡している。
授業中のシンとした空気の中、四人の魔族は全く気にすることなく話し合いを続け、魔法陣により姿を現した邪の存在は異質な空気感に金切り声を上げた。
イシュタルはチョークを手に取ると、後ろの黒板に図を描き始めた。
授業は淡々と過ぎていく。