12☆ミ

文字数 2,309文字

授業の終わりに、四人はニックの元へと集まった。


ニックは溜息を吐きながら帰り支度をしている。

もう来ないでくださいね。

ゼルと仲良くなれた事には感謝しますけど、極力あなた達と関わりになりたくありません。

悪いね。

邪魔したわ。

お詫びに山吹色のお菓子を追加で置いておくから。

いいなあ。

そんなにお小遣いもらえて。

私も欲しい。

一緒に遊ぼうね、ゼル。

ぼくはもっと男らしくて若い男の子と友達になりたい。

いつメンで遊ぶみたいなことがいいな。

お前、本当に良い奴だな。

良かった。

ニックに会えて本当に良かったよ。

聞いたわよ!

ニック!

いつメンですって!

私も!

ラ、ライム。

君とは友達になれそうもない。

ぼくにはもうゼルがいる。

今後一切、関わらないでくれる?

ガーン!

見損なった!

お詫びに何かよこせ!

え?

ど、どうしよう。

何?

ライムちゃんって言うの、この子。

プレゼントに悩んでいるのかな?

ライムちゃんね。

いつもぼくの事を応援しているようで貶してくるんだよ。

どうしたら良いと思う?

これなんかどう?

CHARMの瞳。

カラーコンタクトだけど。

CHARM?

魅惑ってこと?

ほら、ライムちゃん。

カラコンとかどう?

カラコン?

そんなのくれるの?

やっきー!

感謝するわ!

ばいびー!

ライムはカラーコンタクトを受け取ると、颯爽とその場を去っていった。


彼女の後ろ姿を見送りながら、ニックはイシュタルに訊ねる。

あれは何なの?
ふ。

ライムちゃんにはナンパの素質があるよ。

CHARMの瞳というのは、熱い視線を送ると相手を一発で惚れさせる効果があるんだけど。

ライムちゃんにはぴったりだなって。

え?

ライムちゃんはナンパ師なの?

知らなかった。

持てるの?

モッチモチの木ですわ。

ハーレム気質よ。

見限られないの?
何度もCHARMをかけ直す必要があるねえ。
地獄絵図にしか思えないが。
ぼくは自分の力で友達を作りたい。

気の合う仲間と永遠に遊んで暮らすんだ。

これがぼくの快楽だ。

ニック!

お前、本当に好きだぜ!

私も魔族は砂になれば良いと思っていてな!

私達は永遠に友達でいよう。

楽しく過ごそう!

ああ、ゼル。

大好きだ!

もうぼくは孤独じゃない。

これが最高の幸せなんだ。

凄い事を言っている。

とても真似できない。

だろうな!

私達の友情パワーに勝てる訳がないのだ!

ワハハハハ!

ニックとガディスゼルが手を取り合うのを、四人は様々な想いで眺めていた。


イシュタルは満面の笑顔で、アーネトルネは虚無の表情で、シールックは苦々し気に、スクナヒコナは無表情で。



やがて、下校の時間が訪れる。

ニック!

ペンダントありがとー!

永遠に大事にするから!

ニック!

コンタクトありがとう!

めっちゃ似合うし、何故かファンクラブが出来たわ!

助かったよ!

パニィとライムは満面の笑みでニックの肩をそれぞれ叩くと、物凄いスピードで帰っていった。


その様子を、ニックとガディスゼル、四人の魔族は黙って見送った。

もう学校辞めたいけど。

ゼルが一緒にいてくれるなら卒業まで頑張るかな。

ああ!

私も一緒に授業を受けるよ!

みんなには見えないみたいだけど、全く問題ないし!

二人が仲良くする姿を、スクナヒコナは黙って見つめた。


すると、教室の窓から爆美女が姿を現す。

見つけましたわ!

やはりあなたには私が必要なようね!

スウッと音もなく、先程召喚したスキムルークがスクナヒコナの前に降り立った。


スクナヒコナの小さな手を、彼女はそっと握りしめる。

え!

やだ!

あの女は嫌だ!

何故?

私がいないと、あなたは輝けないでしょう?

何故拒否するの?

だって!

3の倍数の時だけバカになるんだもん!

ナベアツは嫌いか?

世界のナベアツ。

あれ好きだったんだが。

シールックにいさん、彼を見て爆笑した感じ?

確かに彼、微妙に頭良さそうだったけどね。

お笑いに数学的要素を取り入れる辺りなあ。

高学歴出身って感じがする。

確かにそうだけど!

イシュタルは冷たい目で見てたじゃんか!

すまぬな。

私はお笑い芸人全般に対して、基本塩対応なんだよ。

そんなのかんけーねぇ!

とか言えない訳。

分かる?

え!

小島よしお?

一発屋だけど、新規に大モテだよな。

子どもにしかウケない。

しかし子どもに確実にウケる。

世代交代の度に永遠にヒットするだろうよ。

ふふ。

それは全て、私の底力ですわ。

私とそこのスクナヒコナが組めば、永遠にオモロイお笑いが出来ますの。

そ、そうだったのか!

知らなかった。

これで正解だったのか。

イシュタルと一緒にいられなくなるけど。

私は何でもいいけど、お笑い芸人とは一緒に暮らせないなあ。

ピン芸人として頑張るなら応援するけどね。

え!

ぼくは孤独じゃないの?

ピン芸人として活躍して、イシュタルと心は繋がったままってこと?

さあねえ。

スクナは私の事を忘れるかもしれない。

アダムはどうしていた?

リリスのことを追放して、イヴと一緒になって、それからリリスの事を欠片でも思い出したかい?

アダム?

リリス?

知らない。

リリスって何?

ってなった。

そういうことだ。

そこの爆美女とお笑い芸人になりなよ。

最高の笑いを皆に届けるんだ。

良いこといいますわね。

さあ、スクナ!

私の元へ帰りなさい!

……ふぁい。
スクナヒコナはスキムルークと再び融合し、二人はお笑いの道へ進む為に魔族を脱退した。


イシュタル、アーネトルネ、シールックは彼を見送り、元の魔の谷へ帰ることにした。

ふ。

オンキリキリバンハッタソワカは駄目だ。

バンハッタソワカの力を見たか!

オンキリキリは駄目なのか。

書き留めておこう。

オンキリキリにどんな力が。
昇抜天閲感如来雲明再憎

だが。

洒落怖……。

本気で笑えなかった。

??

後でネットで確認しよう。

一段落ついたようで皆は安堵し、それぞれの家に帰途についた。
                 了
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登場人物紹介

ニック

ヘタレ魔法使い。

パニィ

ニックにちょっかいを出す女の子。

ライム

ニックにラブレターを渡す謎のツンデレ。

シールック

影の人。

アーネトルネ

魔王の人。

イシュタル

闇のパピヨン。

スタアト

コビット族。スクナヒコナ。

スキムルーク

謎の爆美女。

解脱の姿

ガディスゼル

とりつくしまもなし

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