4☆ミ

文字数 2,029文字

コーラの語源は、コカインではないよ。

cool luck

クールなラック。

カッコいい幸せだよ。

美味し過ぎてコカインの混入が疑われたんだよね!
違う。

コカイン中毒者は重度のストレスにより、コーラのような甘いものを欲するだけだ。

物の無い時代には、コーラは驚くほど甘味が強いご馳走だったのさ。

よく知っているな。

何も考えずに飲んでいた。

雑学倶楽部……。

既に時刻は午前3時を回っているが、ニックは動けずにいた。


すぐに帰りたいと思いつつ、何故か話を聞いてしまう自分がいる。


先程スクナヒコナが作ったペンダントには、モウリョウが幾つも集まっていた。

凄い効果だな。

かみを引き寄せる餌なのか?

このペンダント……。

ぼくたちのモウリョウを集めているね!

これはいいや!

御神体として奉ろう!

え?

突飛な事を思い付くね!

またマロンちゃん人形を作るわ!

なんだと?

それはうちの庭に奉るのか?

丁重に扱えよ。
??

何故、みんなも同じように崇拝するんだ?

まあいいけど。

モウリョウとは……魔族から発するものなのか?

知らなかったな。

論文にまとめよう。

論文に?

あ、そう言えばもう夜は更けたね。

家に帰るかい、メガネくん。

名前は?

……ニックと言います。

カーペラ魔法学校8年です。

魔法使い志望?

それにしては随分魔術に堪能だな。

シールック。

お前、自己紹介しろよ。

おれはアーネトルネ。

すまん。

シールック。

影だ。

種族名まで!

丁寧だね!

イシュタルだよ。

ここからどうやって首都まで帰るの?

半日はかかる距離だよ。

時空転移術を使って家に帰ります。
転移術?

聞いたことがないな。

理論上は不可能では?

ええ。

どこでもドアと同じ原理で発動させます。

魔法陣で素粒子分解を起こして、一旦ぼくという存在を無に帰し、移転先で再構築をします。

つまり、移動の度にぼくは死ぬことになります。

それだけ真魂がしっかりした霊魂は見たことないよ。

ニック、あんた凄い人じゃないの?

肉体年齢を保持したまま、霊魂の再憑依だなんて。

イシュタル。

それは自慢か?

アーネちゃんも可能な筈だが??
何?

ではみんなで試してみるか?

ニック。

おれたちも首都に連れていってくれ。

ええーっ!

みんな、大丈夫だよね!

デュラックから海に溶けてもピンピンしているもんね!

ちょっと心配。

まあ、死んでも別にいいけど。

家に帰るだけだし。

寂しいかな?

誰もどこでもドアに突っ込まないですね。

わかりました。

すぐに陣を描きます。

そう言いながら、ニックはバックパックからチョークを出した。


しかし豪華な厚い絨毯の上にチョークで魔法陣を描くのは忍びなかったので、外で描くことにした。


ニックの後を、四人はぞろぞろと付いていく。

ドラえもんを知っている事を疑問視されたね。
今更よねえ。

これだけ異世界跳躍ネタを連発しているのに。

ドラえもんを知らない訳がないわ。

スモールライトはどういう原理なんだ?
スモールライトは、どこでもドアの応用よ。

一旦身体を分解して無に帰した後で、新しい小さいヒューマノイドとして肉体を再構築するの。

ビッグライトも同じよ。

ただ、ビッグライトは明らかに質量不足を起こすから、仮にビッグライトを使ったら周囲の物質から素粒子を掻き集めなければならないから、大穴が空くね。

身体の半分が地面になるの?

ゴーレムじゃん!

世界観ぶち壊しだが、仕方ない。

これは我らの癖だ。

それもそうだけど。

通り抜けフープは分解・再構築だけだから、通り抜けフープがひみつ道具の祖とも言えるよね。

錬金術だな。
一つのネタからこんなに話題が広まって……。

どんだけコミュ強なんだ。

彼らは。

すまんね。

おばあちゃんの知恵袋係なんだ、私は。

やがて外に出ると、ニックは地面にチョークで魔法陣を描き始めた。


陣構築を見ながら、アーネトルネは腕を組んだ。

不完全な陣だな。

おれが描こうか?

すみません。

お願いします。

これは卑屈な陣だねえ。

ニック、この陣を使い続けると自己肯定感がただ下がりになるよ。

精神球を半分も生贄にするもん。

精神球?

まさか。

感性球の間違いでは?

いいや。

あなたの精神性と陣を鑑見るに、罵倒された時と同じ気持ちになって初めて陣が発動するようになっているよ。

これじゃ、アーネちゃんが死ぬわ。

褒め言葉で動けるように訓練し直さないとね。

あっぶね!

滝のように涙を流すところだった!

……死ぬな。

気持ちが。

全く。

なんて奴だ。

誉道が足りない。

免疫が無いのか。

なるほどね。

未だにそんな所にいるのか。

……そうです。

ぼくも魔族になれば、きっと。

こんな陣を描かないでもっと……。

あんた、意味分かってる?

なんかしょーもないね。

……。
やがて陣が発動すると、五人は一瞬でニックの家へと飛んだ。


最初はにこやかな気持ちになっていた四人だったが、ニックの家の陣に乗った途端に瞬時に悲しい気持ちになり、皆で肩を寄せ合って滝のように涙を流しあった。


再構築の陣には、大変な生への哀しみの術式が組み込まれていたためだった。


平然としているニックはアーネトルネに酷く罵倒され、陣は完全に描き直された。

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登場人物紹介

ニック

ヘタレ魔法使い。

パニィ

ニックにちょっかいを出す女の子。

ライム

ニックにラブレターを渡す謎のツンデレ。

シールック

影の人。

アーネトルネ

魔王の人。

イシュタル

闇のパピヨン。

スタアト

コビット族。スクナヒコナ。

スキムルーク

謎の爆美女。

解脱の姿

ガディスゼル

とりつくしまもなし

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