(二)-6

文字数 279文字

 そう思いついた瞬間、西山さんは俺が理解していないことをすぐに悟ったらしく「衛子(えいこ)さんはいらっしゃいますか」と母の名前を挙げた。
 俺は「ああ、今、畑に行っていますよ」と玄関を降りて靴を履きながら言った。
 西山さんは「行ってみます」と会釈をして立ち去ろうとした。その直後、再びこちらを見た。そして「ごめんなさい、ちなみにあなたは……」と言った。
 それなので俺は兄の弟であることと葬儀で戻ってきたことについて話した。西山さんは礼儀正しく初対面の人向けの挨拶をしてくれた。むしろそういうのにあまり慣れていない俺は、上手く挨拶を返せずに、どぎまぎしてしまった。

(続く)
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