文字数 206文字

 そこに加納沙詠がいた。
 明るいだけの白い霧の向こうに。
 彼女はただ一点だけを見つめていた。
 同じクラスだったときの、あのうつむき加減の加納沙詠ではなく、ましてや死体の顔でもない、僕の知らない顔をして。

 深夜の火事。

 ふと、僕は思った。
 その炎に照らされながら、僕は身動きができないままでいた。
 いつまでも消えない深夜の火事。
 誰も気づかない。
 誰も助けを呼ばない。
 静かに、静かに燃え続ける火事。
 深夜の火事。
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