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文字数 366文字

 加納沙織様

 これが最後のわがままです。もう私があなたを煩わせることはないでしょう。残念なのはただひとつ。この手紙が、あなたへの初めての手紙になることです。少し寂しい気もします。

 わたし、あなたにだけは、声を上げるのを許してほしかった。わたし、叫びたかった。大声はだせなくてもよかった。ただ、誰かに受け止めてほしかった。あなただけ、手を、握ってくれていればよかったのに。

 言いたいことはたくさんあります。言うべきことも。
 けれど、わたしもあなたも苦しんでいる。それは知っているから。だからこそ、この手紙は書けるときに書いておきたかったの。きっと時間は残されていない。そんな気がしたから。

 いっそのこと、二人で逃げられるくらいの強さがあればよかった。

 あなたのこと、

 お母さん

              だいすきよ

        沙詠
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