新歓担当はつらいよ
文字数 1,385文字
「この間また男の子入ったから、全部で今49人いるのね、大体一グループ10人ずつくらいかな」
新歓ノートと表紙に書かれたノートを見ながらかおりが言った。
部屋の中は相変わらずいろいろなもので溢れていたが、二人だけでいると案外広い。机とソファもあるのでそれなりに快適だった。夕方を少し過ぎた頃だったが、部屋の蛍光灯が強すぎるせいで、外の暗さが妙に際立っていた。細身で色白な、「大和撫子」という言葉が似合うかおりは、珍しく髪上げていて、とても良く似合っている。
「10人か、すごいな」
自分達の頃は5,6人だったな、と思い出し少し悲しくなった。
「グループリーダー、なんか凄いことになったんだけど」
かおりからノートを受け取り、グループ編成と書かれたページを見ると、明らかに偏りのあるメンバーが連なっていた。*グループリーダー* 池田、小林(夢)、白井、小泉、安田
「パワーバランス悪いな」
「うん、だから班員で調整しないと」
グループ分けはエンタテのためでもあったが、実際には一年を通してあらゆる活動でこのグループの括りで行動する。かなり重要度の高い人事を僕らが任されていた。所詮サークル事だけれど、部員らの性格や相性やら事情を加味して行くこの作業は骨は折れるがやっていてとても面白い。
グループの人事は、時間とルールを守らないこのサークルでも厳粛に公正と行われていたが、それとなく優太とカナちゃんを同じグループに書き込むと、一番弟子であるやっさんがグループリーダーに立候補したことも加味して、
「竜斗君、やっさんのとこどうかな」
とかおりに聞いた。
「え、でも、安田が連れてきたんでしょ?」
グループリーダーとあまり近い人をいっしょにすることは暗黙のタブーだ。
「うん、だから竜斗もやっさんが良いだろうし、あの子ちょっと派手だからやっさんくらいがちょうど良くない?」
先日、Twitterに揚がっていたやっさんとツーリングに行った写真の中の竜斗君の姿を思い出した。竜人君の場合は兼サーもかなりしているのでそもそもあまりサークル活動に参加するタイプではない。それでもイベントにも毎回参加してくれたし、かなりエゴだがこの采配はきっと僕にしかやらないということも分かっていたので、まあ、爪痕を残したかったのかもしれない。
「うん、まあ分かるけど、ちょっとやりすぎな気もする」
不満げに言われた。当然といえば当然だった。
「さすがにやりすぎか」
珍しいかおりの反論には、強気の姿勢は一瞬でへこたれてしまった。彼女はそれからノートをずっと睨みつけるように眺めていたが、実際にノートを見ているか分からない目をして静かに座ったまま時が流れていった。立ち上がり、うーんと考え込む素振りで腕を組み、狭い部室の間を行ったり来たり往復し始めた。やがて立ち止まって、
「安田のグループ以外、イメージ湧かないね」
と言ってくれた。
「竜人君あんまり来ないだろうし、他のグループリーダーじゃ扱いが難しそう」
「ありがとうございます」
それからはとっと進めることができた。来週のグループ発表までには何とか間に合いそうだ。部室を後にしようとすると、急に彼女に、「安田大好きだね」とぼそっと言われ、返す言葉が浮かばなかった。かおりはさっさと荷物をまとめてしまい、
バイト行ってくると長い黒髪を揺らせながら僕の前を通過して行った。
新歓ノートと表紙に書かれたノートを見ながらかおりが言った。
部屋の中は相変わらずいろいろなもので溢れていたが、二人だけでいると案外広い。机とソファもあるのでそれなりに快適だった。夕方を少し過ぎた頃だったが、部屋の蛍光灯が強すぎるせいで、外の暗さが妙に際立っていた。細身で色白な、「大和撫子」という言葉が似合うかおりは、珍しく髪上げていて、とても良く似合っている。
「10人か、すごいな」
自分達の頃は5,6人だったな、と思い出し少し悲しくなった。
「グループリーダー、なんか凄いことになったんだけど」
かおりからノートを受け取り、グループ編成と書かれたページを見ると、明らかに偏りのあるメンバーが連なっていた。*グループリーダー* 池田、小林(夢)、白井、小泉、安田
「パワーバランス悪いな」
「うん、だから班員で調整しないと」
グループ分けはエンタテのためでもあったが、実際には一年を通してあらゆる活動でこのグループの括りで行動する。かなり重要度の高い人事を僕らが任されていた。所詮サークル事だけれど、部員らの性格や相性やら事情を加味して行くこの作業は骨は折れるがやっていてとても面白い。
グループの人事は、時間とルールを守らないこのサークルでも厳粛に公正と行われていたが、それとなく優太とカナちゃんを同じグループに書き込むと、一番弟子であるやっさんがグループリーダーに立候補したことも加味して、
「竜斗君、やっさんのとこどうかな」
とかおりに聞いた。
「え、でも、安田が連れてきたんでしょ?」
グループリーダーとあまり近い人をいっしょにすることは暗黙のタブーだ。
「うん、だから竜斗もやっさんが良いだろうし、あの子ちょっと派手だからやっさんくらいがちょうど良くない?」
先日、Twitterに揚がっていたやっさんとツーリングに行った写真の中の竜斗君の姿を思い出した。竜人君の場合は兼サーもかなりしているのでそもそもあまりサークル活動に参加するタイプではない。それでもイベントにも毎回参加してくれたし、かなりエゴだがこの采配はきっと僕にしかやらないということも分かっていたので、まあ、爪痕を残したかったのかもしれない。
「うん、まあ分かるけど、ちょっとやりすぎな気もする」
不満げに言われた。当然といえば当然だった。
「さすがにやりすぎか」
珍しいかおりの反論には、強気の姿勢は一瞬でへこたれてしまった。彼女はそれからノートをずっと睨みつけるように眺めていたが、実際にノートを見ているか分からない目をして静かに座ったまま時が流れていった。立ち上がり、うーんと考え込む素振りで腕を組み、狭い部室の間を行ったり来たり往復し始めた。やがて立ち止まって、
「安田のグループ以外、イメージ湧かないね」
と言ってくれた。
「竜人君あんまり来ないだろうし、他のグループリーダーじゃ扱いが難しそう」
「ありがとうございます」
それからはとっと進めることができた。来週のグループ発表までには何とか間に合いそうだ。部室を後にしようとすると、急に彼女に、「安田大好きだね」とぼそっと言われ、返す言葉が浮かばなかった。かおりはさっさと荷物をまとめてしまい、
バイト行ってくると長い黒髪を揺らせながら僕の前を通過して行った。