エンタテ、とは

文字数 606文字

「そろそろエンタテのグループ決めないとな」

 健吾がエンタテの話を切り出した。

「もうエンタテの時期っすか、今年やばそうっすね。うっわ、俺のグループ誰になんだろ」

 安田が興奮した様子で言い、キャップ帽をくるくると回した。

「今年は、確かに楽しみだわ」

 健吾も嬉しそうに左腕の銀の時計を振らせた。

「エンタテってなんですか?」

「ちょっと待って、特に意味はないんだけど、優太って気になる子とかいる?」

 僕は優太に聞いた。

「え?」

「カナちゃんです」

 やっさんすかさず割って入り、優太は安田の顔をぺしっと叩いた。可愛いって言っただけです。とぶつぶつ何か言っていたが、あまり否定はしなかった。

「で、エンタテってなんなんですか」

 あまり焦らしてもかわいそうなので、そろそろ優太に説明することにしよう。エンタテとは、エンターテイメントの略であり、若いパワーをただただ放出する、余興のことである。

 このサークルに所属するものは避けて通れない道であり、多くの部員達がこのエンタテを楽しみに待ち望んでいるのだ。みんなこのためにサークルに参加していると言ってもいい。なんだっていい、ほとばしる震えとそのハートをそのまま全力でぶつけてしまえばいのだ、君の、君だけの、君にしか出来ない震えを解き放ってしまえ!それだけでいい!それだけで!



 優太がぽかーんとした顔で口をぱっくりと開けたまま、ぼくたちの方を見たことのない原色を見るような目で見ている。


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