【Session24】2016年01月11日(Mon)成人の日・鏡開き

文字数 1,343文字

 今日は成人式で、朝早くから若者達が晴れ着姿やスーツに身を纏い、久しぶりに再会する友達と嬉しそうに会話する姿を電車の中や街中のいたる所で、学は観ることが出来た。

 そう言えば、学は成人式に出席したことが無い、それは小学校、中学校、高校の時の友達が殆どいなかったせいと、また成人式に出席しても自分だけ友達が誰もいなくて虚しい思いをするのがわかっていたからだ。だから学にとって、成人式に対する思い入れが無かったし、逆に切ない気分を思い起こすだけであった。

 学にとって学生時代に友達と呼べるひとは殆ど誰もいなく、何時もひとりで過ごす時間が多かったからだ。だから成人式で嬉しそうに会話するひと達を観ると、自分の成人式の時を思い出し、彼らが楽しそうに会話していることが羨ましくもあった。

 学は世間一般のおめでたい行事を友達と過ごしたり、彼女と過ごしたりすることが今まで一度も無く、何時もそのひと達のことを羨ましく思っていたのだ。しかし自分からはその輪の中に入りたいとは思っておらず、専ら自分の興味のあることにひとり没頭するタイプであった。

 また学は今の成人は二十歳であるが、今年から選挙権が十八歳に引き下げられ、成人が二十歳なのに選挙権が十八歳であることに疑問を抱いていたのだ。選挙権が十八歳になったのなら、成人も十八歳になるのが当然のことだと学には感じたからだ。

 そして良く子供の保護責任などの問題で、親にも責任があると言う話が出るが、成人したらもう親から自立するのが成人と言う意味で、親子の縁を切ったのであれば、親が子供の責任を一生負うのもどうかと学は思っていた。極論すると、七十歳の親が五十歳の子供の責任を負うことになると言うことだし、死ぬまで一生、子供の責任を親が取るのは違うのではないかと学は思っていたからだ。

 そんなことを考えながら午前中のカウンセリングを終え、テレビをつけると案の定、成人式で暴れている二十歳の成人が、成人式の壇上に上がりわめいている姿を観て、学は成人式の意味をちゃんと理解して欲しいと思うのであった。成人式とは昔で言う「元服」なのです。そして夕方になり、一本の電話が学のカウンセリングルームに舞い込んで来たのだ。

今日子:「もしもし『カウンセリングルーム フィリア』ですか?」
倉田学:「ええぇ、そうですが…」

今日子:「噂だと、あなたのカウンセリングが評判らしいけど、本当なの?」
倉田学:「評判かどうかは僕にはわかりません。ただ、ベストは尽くします」

今日子:「一度、観て頂きたいんですけど」
倉田学:「構いませんが、何時が宜しいんですか?」

今日子:「1月18日(月)の10時からでお願い出来ないかしら」
倉田学:「ちょっと待ってください。大丈夫ですが、あなたのお名前と連絡先を教えてください」

今日子:「すいません、それは教えたくありません。その時間に伺います」
倉田学:「それを教えてくれないと予約できないのですが、偽名でも構いません。連絡がちゃんと取れれば…」

今日子:「また後日、連絡します」

 そう言ってその電話は切れたのだった。学は不思議に思いながらも、こう言うケースもそれ程珍しいことではないので、何時ものようにこの日のカウンセリングを終えて帰宅の途に着いたのであった。
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