【Prologue04】

文字数 1,289文字

 彼はそのカウンセリングスクールで幾つかの心理療法を学んだのだが、他にも色々な心理療法を教わりに別のカウンセリングスクールにも行き、また自分でも研究を重ねていた。そしてカウンセリングスクールを卒業した後も、直ぐには心理カウンセラーとして食べては行けなかったのであった。そこで彼はアクアリウム関係のペットショップのアルバイトを続けながら、自分のスキルを磨いていった。そして漸く、彼はスクールカウンセラーの補助的な仕事に就くことが出来たのだ。
 しかしそこで彼は愕然としたのだった。それは彼が都内の某小学校でスクールカウンセラーの補助をしている時、その学校担当であるスクールカウンセラーのカウンセリングスキルがあまりにも浅かったからだ。もちろん、そのスクールカウンセラーは心理士系の大学院を卒業した臨床心理士ではあったが、彼女と話をしてみると、心理テストについては知っていたが、心理療法についてはあまり知らず、勉強していないことがわかった。

 彼は色々と調べてみると、臨床心理士や精神科医の心理療法や精神療法は、精神分析、来談者中心療法(クライエント中心療法)、家族療法、認知行動療法、マインドフルネス、対人関係療法ぐらいしか勉強していないと言うことを知ることが出来たのだ。
 一方の彼はと言うと、この何年かの間にそれ以外にも、フォーカシング、ゲシュタルト療法、NLP(神経言語プログラミング)、ソーシャルパノラマなどを勉強して来たからである。
 そして彼は三年後に独立して、自分のカウンセリングルームを東京の新宿駅近くに構えようと決意した。その理由として、彼はこのままでは自分の勉強して来たスキルを活かすチャンスがこの先、一生無いのではないかと思ったからだ。また自分の方がスキルはあるのに、肩書きや知名度でクライエントは心理カウンセラーやカウンセリングルームを選ぶことに対し、疑問を持っていたからであった。
 そして何より、心理カウンセリング業界の必要性をちゃんと世間に認知して貰いたいと言う思いが強かったからである。だからちゃんと勉強していない心理カウンセラーやスキルを持っていない心理カウンセラー、またクライエントに良いサービスを提供できないカウンセリングルームは、淘汰されれば良いとまで彼は思っていたのだ。

 こうして彼は、自分のカウンセリングルームを開く資金を集めるのに、昼夜問わず働いたのであった。またカウンセリングに関する新しい情報収集や自分のスキルを磨く努力も人一倍したのである。彼はただ純粋に心理学のスキルを磨き、その必要性を世の中のひと達に広く知って貰うため、三年間と言う年月を重ねた。そして見事、東京の新宿駅に程近い場所に、自分のカウンセリングルームを設けることが出来たのであった。
 しかし彼はカウンセリングの心理療法のスキルは一流だったのかも知れないが、彼のこころの中のクライエントに対する「いたわり」「ねぎらい」と言った感情が、この時の彼には少し欠けていたのかも知れない。またそれについて彼自身も、この時点では知る由も無かったのである。

~ Prologue END ~
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