第37話
文字数 1,077文字
「姫!姫!」
ポポが私を揺さぶり起こす。一月十四日の夜だった。眠った瞬間にポポが必死の形相で私の前にいた。
「何?何があったの!?」
ポポの言葉を聞く前から何かがおかしいと感じた。いつもはお城のベッドで眠っているのに、今はふわの大きな腕の中にいた。下を見れば地面、上を見れば不気味なほどに大きな満月が浮かんでいた。この間の月よりも大きくて近い。私たちを飲み込んでしまいそう。
「姫!この間の窓が割れた事件。あれの正体が分かったんです。そいつはロムアの宝石に侵入した悪夢の塊だったんだんです。ロムアが大量に吸い取られています。僕たちが捕まるのも時間の問題です。」
息をのんだ。悪夢の塊、一度だけママから聞いたことがある。まだ初代女王のまこが生きていた時代。まこを目掛けて何か黒い塊が飛んで行った。そばにいた家来たちが精一杯まこを守ったけど、少しの欠片がまこの顔についた。その瞬間、そこに逆さ向きのハートが浮かび、痣のようになったそうだ。痛みが走ったものの、その後は何も起こらず過ごしていた時、ロムアの宝石が真っ黒になり、輝きを失った。そして、まこは捕らえられた。まこのその後は分からない。その後王国がどうなったのか分からないが、恐らくまこが命を懸けて王国を守ったんだろう。でなきゃ、今ここに王国はない。ママはそう言っていた。
「姫、腕を見せてください。」
ふわがパジャマの袖をめくりあげる。そして、そこには黒い逆さのハートが浮かんでいた。
「わ、私。」
その時だった。私の腕から黒い何かが飛び出した。
「あ、悪夢の塊だ……。」
「これが……。」
私の腕にずっと潜んでいた。王国では服を脱がないし、今は冬。長袖を着ていたから気が付かなかった。
「ふうか。」「天川ちゃん。」「天川。」
悪夢の塊は四つに分裂し、人の形になった。一人は長い髪の女の子、二人は男の子で……。
「み、皆……。」
「ふうか姫のお友達を特別に招待したんですよ。」
三人の隣で、男の人が笑っていた。
「あ、あなたは……?」
「申し遅れました。悪夢の塊です。名前は特にありません。」
悪夢の塊は私の驚いた顔を眺めて満足そうに笑った。
「あなたのお友達を、まこるん王国に招待させていただきました。大丈夫。今は皆さんいい夢を見ています。ですが、姫。」
にんまり笑った彼の顔は驚くほど楽しそうだった。
「姫様が私に逆らわなければ、ですがね。」
「さ、逆らったらどうなるんだ!」
ポポが叫ぶ。
「それはもちろん、永遠の眠りについてもらうしかないですよ。」
永遠の眠り……。皆を助けなきゃ!
「その顔!使命に満ちたような顔しないでください。うざったらしい。」
ポポが私を揺さぶり起こす。一月十四日の夜だった。眠った瞬間にポポが必死の形相で私の前にいた。
「何?何があったの!?」
ポポの言葉を聞く前から何かがおかしいと感じた。いつもはお城のベッドで眠っているのに、今はふわの大きな腕の中にいた。下を見れば地面、上を見れば不気味なほどに大きな満月が浮かんでいた。この間の月よりも大きくて近い。私たちを飲み込んでしまいそう。
「姫!この間の窓が割れた事件。あれの正体が分かったんです。そいつはロムアの宝石に侵入した悪夢の塊だったんだんです。ロムアが大量に吸い取られています。僕たちが捕まるのも時間の問題です。」
息をのんだ。悪夢の塊、一度だけママから聞いたことがある。まだ初代女王のまこが生きていた時代。まこを目掛けて何か黒い塊が飛んで行った。そばにいた家来たちが精一杯まこを守ったけど、少しの欠片がまこの顔についた。その瞬間、そこに逆さ向きのハートが浮かび、痣のようになったそうだ。痛みが走ったものの、その後は何も起こらず過ごしていた時、ロムアの宝石が真っ黒になり、輝きを失った。そして、まこは捕らえられた。まこのその後は分からない。その後王国がどうなったのか分からないが、恐らくまこが命を懸けて王国を守ったんだろう。でなきゃ、今ここに王国はない。ママはそう言っていた。
「姫、腕を見せてください。」
ふわがパジャマの袖をめくりあげる。そして、そこには黒い逆さのハートが浮かんでいた。
「わ、私。」
その時だった。私の腕から黒い何かが飛び出した。
「あ、悪夢の塊だ……。」
「これが……。」
私の腕にずっと潜んでいた。王国では服を脱がないし、今は冬。長袖を着ていたから気が付かなかった。
「ふうか。」「天川ちゃん。」「天川。」
悪夢の塊は四つに分裂し、人の形になった。一人は長い髪の女の子、二人は男の子で……。
「み、皆……。」
「ふうか姫のお友達を特別に招待したんですよ。」
三人の隣で、男の人が笑っていた。
「あ、あなたは……?」
「申し遅れました。悪夢の塊です。名前は特にありません。」
悪夢の塊は私の驚いた顔を眺めて満足そうに笑った。
「あなたのお友達を、まこるん王国に招待させていただきました。大丈夫。今は皆さんいい夢を見ています。ですが、姫。」
にんまり笑った彼の顔は驚くほど楽しそうだった。
「姫様が私に逆らわなければ、ですがね。」
「さ、逆らったらどうなるんだ!」
ポポが叫ぶ。
「それはもちろん、永遠の眠りについてもらうしかないですよ。」
永遠の眠り……。皆を助けなきゃ!
「その顔!使命に満ちたような顔しないでください。うざったらしい。」