第5話

文字数 1,041文字

後ろの人が立ち上がった。あ!っと思ったけどもう遅かった。後ろの人に体重をかけていた私は、そのまま歩道橋に転がった。痛……。でもその痛みも、すぐに驚きで搔き消された。
「国本君……。」
信じられなかった。国本君が私を助けた?
「やめろ!お前は死ぬな!」
は?あ、あんたに何が分かるの!!!
「う、うるさい!あんたなんかに何が分かるの!」
「何があった!死ぬほどのことか!?何があったんだよ!」
「パパが死んだ!あんたは身内を失ったことがあるの!?どれだけ辛いか、あんたには分からないでしょ!」
何にも知らないのに、口出ししないで!黙ってて!
「それは分からない!俺には分からない!でもそれでも死ぬな!生きろ!命を軽く見るな!」
「軽く見てなんかない!私は精一杯生きた!でももう無理!」
もう一度立ち上がり、手すりに手をかける。もういいの。もう死ぬって決めたの。
「待て。」
私の手の上に国本君が手を重ねた。
「お前が死ぬことを誰が望んでるんだ!身内を失ったなら身をもって分かるだろ!夫もお前も死んで、残された母親はどうなるんだ。」
ママ……。思い出さないようにしていた。絶対決心が鈍るから。わざと思い出さないようにしてたのに……。心の中で何かが切れた。ママ、ママ、ママに会いたい。ママ。涙が出てきて止まらなかった。立っていられなくなって、その場に崩れ落ちる。
「私、私、すごく怖かった。パパが死んだときも、今もとっても怖くて、でも、でも……。」
後は言葉にならなかった。ただただ泣きながら震えることしか出来ない。そっと国本君が近寄ってきた。震える私の手を握り、そのまま国本君の胸の中に私は収まった。あー。もう涙が止まらないよ。

「ふうか姫。」
「あ、皆。」
あの後、そのまま警察署に連行された私は、そこでママに引き取られた。ママは私を抱きしめてくれた。すぐ本当にごめんなさい、って謝ったからなのか、ママは怒らなかった。涙が止まらない私を、ただママも泣きながら抱きしめ続けた。家に帰ってきて、ママは私をベッドに寝かせると、「今日は姫の仕事をしなくていいわ。みんなには言っておくから。ゆっくりお休み。」って言ってくれた。ママはまこるん王国の女王様。皆って誰って思った?それは夢の世界で私を助けてくれる人……じゃないか……仲間?いや、ぬいぐるみ!ユニコーンのふわ、犬のポポ、熊のルイ、虎のてく。皆私が大切にしてたら、まこるん王国だけではロムアの力のおかげで、普通の人間みたいに生活できるのだ。そんな皆が私を心配そうに見つめていた。
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登場人物紹介

天川ふうか

夢の国でふうか姫としてお仕事してます!!

中学受験のために塾で頑張ってます!勉強はへっぽこだけど笑

白浜佳凛

ふうかの親友です。

しっかり者で頭もまあそこそこ……笑(いや!めっちゃいいです!Byふわ)

国本陽翔

ふうかのクラスメイトだ。

勉強は佳凛には及ばないけど、ふうかよりはいいだろ。(こんな感じだけど根は優しいよね!Byふわ)

港山拓也

天川ちゃんのクラスメイトで~す!

皆にチャラいって言われるけど、そんなことないよ~?ところでそこの君!可愛いね。

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