第35話

文字数 1,050文字

私がママに手を伸ばした瞬間、ママは膝から崩れ落ちた。
「ママ!」
「女王様!」
なんとか四匹に支えられたママはソファーに運ばれる。ママの息が整う間もなく、ママの体から光が出て宙に浮いた。
「え?」
言葉を失う間にママのドレスが消えた……いつものパジャマ姿になった。パジャマに王冠だけ被せられたママは、空中からソファーに戻された。光も消える。
「ママ?大丈夫?」
何とか声を絞り出すと、ママはひどく息を荒くしだした。涙を流して胸を抑える。
「女王様!横になってください!」
ポポがママを横にして、皆がママの周りに集まった。
「女王様!」
「ママ!」
何度も声をかけ続ける。ふわとルイがお水を持ってきたりして、ママは何とかソファーに座れるぐらいになった。お水を飲みながらママは語りだした。
「ロムアの力が弱くなりすぎてる。私のドレスがパジャマに戻ったのも、ロムアの変身魔法が効かなくなっているからよ。じきに、四匹も話せなくなるかもしれない。」
「え!?」
四匹を一匹ずつ見つめる。変身魔法も効かなくなるぐらいロムアの力が足りない。つまり、四匹がただのぬいぐるみに戻るのも時間の問題っていう事だ。
「ママ、私今から皆の夢を守ってくる。」
「無理しないでね。本当にダメだからね。もうすぐ受験で……。」
「分かった分かった。ママは休んでて。ポポ、てく、一緒に来て。ルイ、ふわ、ママをよろしくね。」
「はい!」
私は走り出した。そっとドレスに触れる。長くて走りにくいドレスをぽんっと叩き、Tシャツと短パンにした。そのまま走り続け、皆の夢を守る。途中でロムアの宝石を見かけた。思わず立ち止まった。宝石が大きく窪んでいた。記憶の中の大きな宝石をそこに重ねる。パパが生きていた頃、ママとパパと三人で見た、綺麗できらきらとした宝石が私たちを照らしていた。あの頃は幸せだった。
「姫。」
てくに声をかけられてはっと頬に触れた。涙が頬を伝っていく。
「頑張りましょう、姫。」
私はポポとてくと走り出した。空には綺麗な満月が光っていた。

「これで中学受験コースの全ての授業を終了する。これから、激励会を行う。トイレ等を済ませ、十分後には席についておくように。」
一月十三日。受験の二日前になった。とうとうこの日がやってきた。怖くて震えて、なぜか妙に落ち着いてる?そんな感じの変な気分。緊張してる?分からない。グルグルと頭の中で同じことが回っている。私は合格できるのかな。出来ないかも。でも、もう考えない。三人と先生と家族と塾のみんなと必死にやってきた。きっと大丈夫。絶対大丈夫。

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登場人物紹介

天川ふうか

夢の国でふうか姫としてお仕事してます!!

中学受験のために塾で頑張ってます!勉強はへっぽこだけど笑

白浜佳凛

ふうかの親友です。

しっかり者で頭もまあそこそこ……笑(いや!めっちゃいいです!Byふわ)

国本陽翔

ふうかのクラスメイトだ。

勉強は佳凛には及ばないけど、ふうかよりはいいだろ。(こんな感じだけど根は優しいよね!Byふわ)

港山拓也

天川ちゃんのクラスメイトで~す!

皆にチャラいって言われるけど、そんなことないよ~?ところでそこの君!可愛いね。

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