第26話

文字数 1,134文字

楽しい会話が途切れて、私はそのまま下を向いてしまった。国本君の好きな人って誰?気になってしかたがないのは何で?
「どうしたの?天川ちゃん。」
「え、何が?」
顔を上げたら私を覗き込む港山君がいた。少し近くなった距離にドキドキする。
「表情暗いけど。」
「ごめん。考え事してて。」
「何考えてたの?」
なんだか港山君になら話せる気がした。
「国本君の好きな人って誰なんだろうね。」
「気になるの?」
「気になる。理由も分かんないけど気になる。何でかな?」
「じゃあさ、一個聞いてもいい?」
「何?」
港山君が立ち上がる。私にも手を差し伸べてくれて、その手に捕まって立ち上がった。
「そこの壁に背中をくっつけて。」
「う、うん。」
聞くって言ったのに、質問してこないのかな?なんて思いながら、背中をくっつけて立ち顔を上げると、さっきよりももっと近い距離に港山君がいた。しかもさっきとは違って顔が!顔が近い!ドキドキしていると、そっと港山君の手が伸びてきた。そのまま壁に手をつく。これって……壁ドン!?近すぎる。ドキドキが止まらない。その時、港山君が顔を近づけてきた。え、キスされる!?嫌だ。怖い。ぎゅっと目を瞑る。必死に顔を背ける。嫌!助けて!国本君!
「これ、陽翔にされたらもっとドキドキする?」
「え?」
はっと目を開けたら、港山君がさっきと同じぐらいの距離で私を見つめていた。
「陽翔にされたらキスする?」
国本君にされたら?
「そんなの……。」
何も言えなかった。するわけないじゃん!心の中では答えが決まっていたのに……。決まっていた「はず」なのに……。
「ほら、何も言えないじゃん。そういう事だよ。」
それだけ言うと、港山君はそのまま佳凛ちゃんの部屋を出て行った。私は膝から崩れ落ちる。何あれ?いきなりの出来事すぎた。そもそも、国本君の好きな人が気になる理由を教えてくれるって言って、壁ドン。それからこれが国本君だったら?と聞かれた。国本君だったらキスしてた?自分を誤魔化すことはもう出来なかった。
「あ、天川。」
部屋のドアが開いて、国本君が入ってきた。
「拓也と何か喧嘩したのか?廊下で話してたら、拓也が前を通り過ぎて出ていったんだ。心配だって言って白浜が追いかけてった。なぁ、どうした?」
私は下を向き続ける。キスされそうになったなんて言えない。心配してくれる国本君に本当のことを言えないのが悔しくて、泣きそうになって歯を食いしばる。頭に何かが乗った。
「何があったか知らないけど、元気出せよ!」
国本君が言ってくれる。そっと頭を撫でてくれる。ばれないように零した涙は、私の本当の気持ちが込められていた。さっきよりも今の方がドキドキすること。国本君の好きな人が異様に気になる理由。それは、それは……国本君が好きなんだ。
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登場人物紹介

天川ふうか

夢の国でふうか姫としてお仕事してます!!

中学受験のために塾で頑張ってます!勉強はへっぽこだけど笑

白浜佳凛

ふうかの親友です。

しっかり者で頭もまあそこそこ……笑(いや!めっちゃいいです!Byふわ)

国本陽翔

ふうかのクラスメイトだ。

勉強は佳凛には及ばないけど、ふうかよりはいいだろ。(こんな感じだけど根は優しいよね!Byふわ)

港山拓也

天川ちゃんのクラスメイトで~す!

皆にチャラいって言われるけど、そんなことないよ~?ところでそこの君!可愛いね。

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