第14話 シンクレティズム、あるいは俗物図鑑

文字数 556文字

 その宗教施設(?)を間近で見ると、なんとも奇妙な(つく)りをしていた。
 なんといえばいいのだろうか、教会風ゴシック建築のようでもあり、それでいて(見方によっては)神社風の新明造(しんめいつくり)のようにも見える。和洋折衷(わようせっちゅう)を目指したのだろうか。あるいは、ここが宗教施設だと仮定しての話だけれど、教義(きょうぎ)自体が混淆的(こんこうてき)なのだろうか。

 黒田は意気軒昂(いきけんこう)としゃべる(と言うより怒鳴る)。「さぁ、入り口に着きましたよ。ここが私たちのアジテーティング・ポイントです。ふつうは

と言いますね。またの名を

。あなたたちの考えていることはすっかりくっきりまるっとお見通しですよ。隠れ家にしては、ずいぶん目立つ建物じゃないかって。なるほど、言いたいことはわかります。しかし大事なことは、人間という生き物は

という事実です。つまり、隠そう隠そうとすると知りたくなり、見せよう見せようとすると見たくもなくなるという人間の習性です。人間ってイヤですね。俗物としての人間。そういえば『俗物図鑑』なんて小説もあったような、なかったような。まぁ、私は読んでいませんけどね」

 私たちは建物内に入るべきかどうしようなお互いに探り合いながらしばらくの間躊躇していたけれど、

という暗黙の了解が芽生え、えいやとばかりに全員で中に足を踏み入れた。

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