第9話

文字数 3,198文字


 今回はいきなりの戦闘シーンから始まる…──。


 RA-04(ウォリアー)のコクピットの中のラウラは、正面モニターいっぱいに迫ってくる(アルメ)-(ブランシェ)の使用している機体と同系統と思しき、旧世紀の西洋甲冑を思わせる意匠(デザイン)機動兵器(RA)に目を見開いている。

 ──…速い…っ……‼

 その突っ込み速度が尋常なものでないことは、実戦経験が決して豊富とは言えない彼女にも容易に理解できた。

 ラウラはウォリアーに左腕の大型シールドを掲げさせ、背面のバックパックから伸びる可動バーニアだけで機体を後退させる。
 機を見て反転する (そうしなければ最大推力を発揮できない)心算(つもり)だったが、そんな余裕はどこにもない…──。
 右手のリニアガンで応戦するが、全く当てられる気がしなかった。リニアガンは威力は大きいが発射速度は低い。

 警報の電子音が鳴った。

 ──…しまっ……!

 トリガーを引き続ける動作が単調なものになってしまっていた。
 放たれた数発の弾道を掠めるように、敵のRAは一気に距離を詰めてきた。対応が遅れる。
 モニターの中の敵機の頭部で、目にあたるセンサー部が鋭く光ったように思えた。
 次の瞬間、ラウラ機はシールドを蹴り上げられ、左の腕からそれ(シールド)は弾き飛ばされていた。

 コクピットが揺れて、モニターの映像がぐるりと回転する。
 ラウラは即座にペダルを踏み込んで操縦桿を引き、回転を打ち消そうとする。

 そのウォリアーの動きを、敵は見過ごしはしない。
 右手の袖口に仕込まれた電磁ワイヤーを打ち出してきた。
 ワイヤー先端のアンカーがラウラ機の左の肩を捉える。

 ──…この……っ……‼

 だがこのとき、ラウラは〝火事場の馬鹿力〟を発揮して見せた。
 咄嗟にウォリアーの左手にワイヤーを掴ませると、その左手首を回転させて (RAの手首はクルクルと360度回る)ワイヤーを強引に巻き取ってゆく。

「…──いい気に… なるなぁ……あっ!」(──ココ、かっこいいBGMね♪ by ラウラ)

 結果として自らの左肩の装甲も引き千切りながら (なぜそんな状況でワイヤーが切れてしまわないのかはさて置き)、ラウラのウォリアーは相手を強引にチェーンマッチ状態に引きずり込んだ。
 そうやって相手RAの行動の自由を奪ったラウラは、頭部の20ミリ近接火器を浴びせ掛け…──。


  *

 ──…盛り上がってきたところですが、このままだと尺がいくらあっても足りないので、巻くことにしました。

  *


 あらためて周辺の状況を整理・説明しよう。

 先ず、ホレイシオ・メレディスの周辺…──。
 メレディス・ミュラトールの偽名 (トレイナーの方だって本名とは限らないが……)を名乗り〝ミュラトール商会〟の会頭の肩書で再登場したこの謎めいた青年は、自らの意思か、将又(はたまた)背後に在る何者かの意思に従ってか、中立コロニー〝ペデスタル〟の迎賓館に各界の要人を秘密裏に集めて会合を持っていた。

 幾つかの自治コロニー政府の外交当局者、
 軍閥領袖やその腹心格、
 著名なテロリスト(⁉)、
 財界の実力者、
 企業体の意思決定に携わる地位に在る者。

 そして地球連邦政府内の有力者に連なる者。

 後に彼らは〝台座(ペデスタル)の手配者たち〟と呼ばれる。


 メレディスはその泰然とした身振りと明瞭な言振りとで、瞬く間にその場の彼等を仕切る存在となる。
 彼は連邦主導の現体制の解体の必要性を改めて説くと、その実現への目論見を、もっともらしい行程(ロードマップ)込みで披露し、そうすることでこの場に居合わせた者の心の深い所に、小さく毒を含んだ関心──〝禁断の果実〟を抱かせることに成功する。

 彼は言った。(アルメ)-(ブランシェ)による武装蜂起などは、計画のほんの手始めに過ぎないと──。

 時代を一面からのみ評価することしかしない(A-B)らは、決して〝真打ち〟足り得ることはなく、結局は時代の徒花(あだばな)として散りゆく存在でしかないのだ、と。

 その上で、古き良き時代──〝連邦による現体制〟が彼らの退場と共に華々しく散った後の新たな舞台の上に〝真打ち〟として立つのは、ここに集う我らこそが相応しい、と。

 そんな甘言で(もっと)もらしく誘ってみせれば、それを聞いた要人のうちの幾人かは、この共闘の提案にそれぞれの打算を弾き始めていた。
 それほど魅力的に、ホレイシオ・メレディスという人物はこの事態を語って見せたのだ。


 連邦政府首相補佐官の娘であるフェリシアは父の名代として話を聞きはしたが、父の薫陶からメレディスの言葉を額面通りに受け取るようなことをせず、先ずは態度を保留してみせた。

 …──ここからは俺たちの周辺となる。

 そうしてメレディスが民間の貨物船に偽装した軍用船でペデスタルを後にしたことを察知したフェリシアは、連邦宇宙軍参謀本部を動かし強襲巡洋艦コモンウェルスに〝索敵攻撃部隊〟としてこれを追わせることとし、自らも巡洋艦に乗り込む手筈を整えてしまうのである。……それにはいったいどんな法的根拠が在るのか、などと(ry

 ともかく、その〝索敵攻撃部隊〟の指名を受けた強襲巡洋艦コモンウェルスであるが、補給と整備を終えるやお客さん──フェリシア・コンテスティとお目付け役の秘書仲間(男だ)が一人…──を『監査役』として迎え、いよいよ星の大海原へと乗り出すこととなった。


  *

 メレディスの貨物船はペデスタルを出航してすぐに見失って (お約束だ!)しまったが、フェリシア乗艦のご利益であろうか、参謀本部なり情報部なりから情報がひっきりなしに提供され、彼の宇宙船(ふね)のおおよその針路は同定できていた。……因みに、コモンウェルスの艦内では、特務大尉相当官の制服姿のフェリシアの生写真(ブロマイド)が瞬く間に出回ったとかなんと(ry

 そしてそんな中クリストファー・レイノルズ中尉のチームは、模擬戦形式の錬成訓練やら他のRA小隊との喧嘩やらといったお約束のシーンを経て、その絆を強めていっている。
(……実際にはチームワークという点では、まだちょっとアレだが……。)

 なぜ民間人の (少なくとも周囲にはまだ素性は明かされていない)リオが、そのままRAパイロットとして(ふね)に残っているのかは、この際置いておけ。


 冒頭のシーン…──あれは、そうした中でリオとラウラが定時哨戒に出る、という流れからのものとなる。

 コモンウェルスの針路上を先行して哨戒する、という基本中の基本の任務なのだが、〝ご都合()()主義〟は、このようなときにこそ這い寄ってくるのものなのだ。

 予定針路上の担当エリアを順調に消化しつつあったリオとラウラだったが、最後の方になってリオの機体に異常振動が発生する。
 そしてすぐさま機体の自己診断装置が、2基ある(メイン)推進器(スラスタ)のうちの1基の圧縮機(コンプレッサー)に不調が生じ、その機能を停止せざるを得なくなった旨を告げるのだ。

 哨戒の行程が残りわずかであったこともあり、母艦コモンウェルスからの指示 (──…はい、隊長である俺の指示です)…──は、推進力が1/2(片肺)となったリオを先にコモンウェルスに帰投させ、ラウラが残りの行程を1機でこなす、というもので……

 それ見ろ、言わんこっちゃない、ということになるわけだ。

 ラウラは〝敵〟──所属不明の機動兵器(RA)と遭遇した。


  *

 ようやくシーンが冒頭の戦いのところまで戻ってこれた。(…──長かったでしょ?)

 ともかく、ラウラはやられっ放しのか弱いお姫様パイロットではなく、果敢に反撃に転じる女主人公の道を選ぶタイプ…──実際、リオネルよりもRA戦では活躍してるくらいだ。……あ、失言でした。


 窮鼠は激しく猫を噛み、ラウラと所属不明のRA二機は、互いに絡み合って大破となった。
 そして、それぞれの機を脱出したラウラと敵のパイロットは、先の戦闘で廃棄され、折よくこの空域まで流れてきていた連邦宇宙軍の戦艦の残骸へと退避するのである……。


 ──…言いたいことはいろいろと見つけられるだろうが、ここは、俺の顔に免じろ……。な?
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