第3話

文字数 1,013文字


 物語は〝いつものアレ〟──謎の軍隊からの攻撃──で始まった。

 この物語世界において、地球連邦は強力な中央集権体制を敷いており、世界は〝体制の側の者〟と〝捨て置かれた者〟、〝持てる者〟と〝持たざる者〟とに分かたれている。
 民主政治の結末がコレというのは何とも悲観的ではあるが、この類の設定はもはや何らの疑問も差し挟まれることのない、洋の東西を問わない〝お約束〟だと言えよう。

 この後、このままではこの世界は、帝政または貴族封建制への道を辿るか、国家社会主義的な管理体制へと邁進していくことになるのだろう。
 だが、差し当って〝この物語〟の現在(いま)は、巨大な体制が維持される中で反体制の側が水面下に潜り時節(とき)を待っている、という構図だ。

 そして、その反体制の側が、体制の側の軍である連邦軍の目を盗み、同じく虐げられた者の協力を得て整備した軍事力を以って遂に戦端を開いた…──。
 そんな図式が、今回のお題『謎の軍隊からの攻撃』である。


 実は技術的には相当に無理のある設定ではある。
 そもそも全世界を掌握している単一の軍事組織であるところの連邦軍の目を盗んで、何故にそんな大規模な軍隊が湧いて出て来得るのか?
 この様に大規模かつ同時多発的に蜂起されるに及ぶまで、なんらの兆候も掴めなかった情報部……。これらは何も機能していないのか? 無能なのか?

 それらの問いには一応もっともらしい説明は用意されている。
 先ず、連邦軍内部は軍閥化しており一枚岩ではないこと。

 そして宇宙開発を黎明期から支えてきた巨大企業(コングロマリット)(なぜこの手の企業体の意思決定層が機能不全に陥るほどの分裂はしないのか…連邦政府はガタガタなのに……はさて置き……)が政府とそれぞれの軍閥をその潤沢な資金で操り情報を操作していること。

 それならそれで、せっかく巧くいっている(ほぼ世界を牛耳っているわけなのだから)そういう取り決め=仕組みを維持すればいいものを、それをよしとしない反体制の側の一部の理想主義者が、実力行使をも辞さずに表舞台に立とうとしていること……。

 まあ、こんなところだ。
 ──…メンドクサイね。……その割に〝苦しい〟し。


 さて、今回の『謎の軍隊』は〝アルメ・ブランシェ〟と名乗っている。

 軍人貴族趣味のオタク共ではない。
 むしろ先鋭的な共和主義者の集団、といった趣で…──まぁ、どちらにしても面倒くささに変わりはないが…──融通の利かない知識階級(インテリ)の原理主義者である。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み