第6回 プチ。

文字数 1,396文字

プチ不調という言葉がある。
いったいいつできたのでしょう。
「プチ」というなんとなくかわいらしい言葉と「不調」という不穏なイメージしか湧かない言葉。誰がどうしてこの二つを組みあわせたのか。
すごい言葉のチョイスですが、よくよく考えてみれば「ブサかわいい」とか「細マッチョ」とかもそうなのか……。

で、ググるとちゃんと答えらしきものに出会うからネットから逃れられない。
・撞着語法:互いに矛盾していると考えられる表現を含むこと
例)小さな巨人・賢明な愚者・生ける屍 等々

ははあ、一つ賢くなりました。
という日本語の勉強の話にもっていきたいわけではなく(そういう造詣の深いテーマで語れたらいいのに)。


いかにプチ不調という言葉が厄介かという話です。


私はこのプチ不調という言葉に大変お世話になっております。
休むほどじゃない歯痛。
寝こむほどじゃない頭痛。
病院行くほどじゃないだるさ。

要は「騒ぎなさんな、みっともない」とたしなめられそうなレベルの不調が多い!
自分でも「いや、これで騒ぐのどうなの……」ともやもや葛藤するレベル。
そういうときにぴったり寄りそってくれる、プチ不調という言葉。

「いや、プチ不調なんだよねえ」

確かにそのとおり。
そうなの、プチなの。
プチってかわいいじゃん。
半濁音ってなんか平和じゃん。


いや!しかし!なぜに!(@フジファブリック)
なかなかどうしてプチ不調とは地味につらいのです!!

考えてみてください。
休んだら、寝こんだら、病院行ったら。
治るでしょう(当たり前)。

でもプチ不調は休みも寝こみも病院行けもしないので、治らないわけですよ!
だからかわいい顔して、ずーーっと付きまとってくるわけですよ!
実は一番危険ですよ!
ガッキーが魔性の女で、あのかわいさで付きまとってきて、あなたのお財布目当てで、ずーーっと搾取されたらどうです? しんどいでしょう?
や、でもガッキーだとプチレベルのかわいさじゃないか……なんかこう! 身近で! 絶妙なかわいさの人に付きまとわれたらどうです?(いろいろ物議をかもしそうなたとえ!)

プチ不調という語感に、いや、プチという語感にわれわれはだまされています。
地味にしんどいというのが、どうしてもっと深刻視されないのか。
風邪は引きはじめが肝心、早期発見が重要とか声高に叫ばれているわりに、なぜプチ不調はもっとケアされないのか。

じゃあ言えよ。
不調だと申告しろよ。

という声が聞こえてきそうです。
……うん、そうですよね。

私は今現在、悩んでおります。
ジョギング中、なにもない平地ですっ転び、ひざを擦りむき、曲げ伸ばしすると地味に痛いのです。
激痛じゃないんです。
包帯巻くほどじゃないんです。
でも痛いんです。

果たしてこれを周囲にPRすべきか否か。
そもそもひざという絶妙な位置。
普通に隠れてしまうじゃない。怪我してるって気づいてもらえないじゃない。

「いやー、今、ひざ痛いんですよお。すっごい痛いわけじゃないんですけどお。地味に痛くてえ。だから激しい動きとかあ、重いもの持ったりするのはあ、NGなんですう」



ワタシハイエナイ。
せいぜいうつむきがちに「へえ、プチ不調なもんで」が妥当でしょう。
ああ、便利な言葉って残酷。
今日もプチ不調とともに生きていきます。
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