第2話 初の二次創作へ……

文字数 1,312文字

 寝ても覚めても、その作品の事が脳内を駆け巡る。次の巻が出るのは、今から約二か月半後。ガツガツと漁り、読み耽ったその作品に纏わる二次小説や二次漫画・イラストは数えきれない程だ。創作者により、原作にはない設定を加えたり。カップルにはなっていない登場人物をパートナーにしたり、オリジナルキャラを加えたりなどして実に自由に創作されている。自分と同じような解釈の元に創作されている作品や、似たような妄想を描かれているものを貪欲に探しては読み耽った。

 二次創作は公式に正式に許可を頂いたものではなく、お目零しをして頂いているという現状を把握しつつ読む為、どことなく後ろめたい気持ちを覚えながら。(勿論、しっかり弁えて二次創作されている方々を否定する意図は毛頭ない)
 
 その内、まさかのとんでもない現象が起こった! 余りにも二次創作を読み過ぎて

のだ。さすがにこれは宜しくない、原作に失礼だ、強強そうく感じたそう感じた。一旦二次創作を漁るのを中断し、原作を一巻から丁寧に再読を始めた。もう一度、登場人物がどう絡み合い、どのような作品なのか。何がテーマなのかを先入観を出来るだけ排除し、真っ新な気もちでじっくりと読み進めていった。

 読み終わる頃には、思考の整理も捗り至極当たり前の事なのだが、

という結論に至る。つまり、作品への愛の原点に返ってきたのだ。そもそも二次創作を読むようになったのは、

からだった。

『あの場面のこういうところ、彼はこんな風に思ってそう』
『もしかしてあのシーンがこうだったら、こんな風に変わってたかも』
『あのキャラ、エジプト王族の衣装とか似合いそう』
 
 等など……。語り合いたい、とりとめのない空想を同じ性癖の持ち主と楽しみたい。そんな胸の奥からとめどなく突き上げてくるような想いをどうにかしたい。そこで唐突に思い付いた。

 そうだ! 自分でその想いを書き連ねて原作者様にファンレターを送れば良いのでは? と。早速、可愛らしい便箋を購入してシャープペンを取った。先ずは下書きからだ! どれだけ作品が好きか、作中の出来事で己の劣等感や心の傷と向き合い、しんどかったけれどその事によって癒されていった事。作品のお陰で古傷に新しい皮膚が再生して来ている事。どの場面が好きか、暇さえあれば登場人物たちの空想を楽しんでいる事、それからそれから……

 ふと気付けば便箋十枚を超えていた。ファンレターでこれは多すぎる! これでは原作者様に届く前に弾かれてしまいそうだ。ファンレターどころか迷惑かもしれない。読み直してみる。

 ……さながら二次創作のようだった。

 この滾る想いが落ち着くまで、ファンレターを書くのは控えよう。そう結論づけた。

「いっそのこと、自分で二次小説を書いてみようか」

 そう思い立った。ひっそりと自己満足な作品を。いけない事をしているような罪悪感を抱えつつ。二次創作が可能な小説投稿サイトを検索する。

 人生初の二次創作の世界へ足を踏み入れた瞬間だった。禁断の果実を口にしたイブの心情が、ほんの少しだけ理解出来るような気がした。
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