第9話 二次創作は室町時代以前から……

文字数 1,467文字

 さて、今回は今までとは異なる切り口から語ろう。

 一次創作から二次創作に入ると、作品を描くのが非常に楽な事に気付く。それはそうだ、二次創作キャラの設定も物語の構成もプロの原作のものを無断で拝借し、キャプションなどに原作○ページの〇○より、とか、第〇章の設定を使用しています、と書いておけばいきなり書きたいところから説明無しで描けるのだから。更に、他の作品の設定を無断で拝借してパロディーやらクロスオーバーにしてみたり等、やりたい放題な訳だ。そこに、いくら己のオリジナルを加えたとしても、根本が無断拝借なのだ。言わば、農園の野菜や果物を無断でお借し、その素材でアレンジ料理をするようなものだ。こう書くと、二次創作が明らかな

であるという事が明確になるだろう。このように本来は真っ先に大前提にしないといけない部分を、マスコミもしっかりと報道して頂きたいものだ。
 故に、二次創作から入って一次創作にチャレンジすると、一から全て己が作り上げなければいけない大変さに気付くだろう。一度、二次創作に手を出してしまうと抜け出しにくいというのは、人間は楽な方向に流れ易いという傾向を如実に示しているのではないだろうか。

 とは言え、正直に言おう、二次創作は楽しい。例えば、ある恋愛漫画があったとしよう。けれども、ヒロインよりも当て馬役の方が好みで、そのキャラと主人公がカップルになって欲しい場合。或いは、物語の展開が好みのものではなかった場合等々、ここで二次創作の出番なのだ。当然、カップル表示は欠かせない上に公式を捏造しているので普通のファンが見て誤解させるのはご法度だが思う存分、妄想の世界で己の好みの展開を楽しめる。これは、何も今に始まった事ではない。

 室町時代に描かれたと思われる二次創作作品が発見されたという。恐らく発見されていないだけで、もっと古くから二次創作が楽しまれていたのだろうと簡単に推察出来る。古事記や竹取物語、そして源氏物語……およそ、この世に物語というものが口伝えで伝わる時から、個人の耳を通して胸に響き、ストーリーに思いを馳せる。きっと、心の中で結末を迎えた物語のその先、或いは、お気に入りの登場人物に己を投影させたり、登場人物に恋をしてその相手役を自らに妄想したりと、人知れず夢の世界を堪能していたに違いない。文字というものが発達するようになり、妄想を文字に書き起こしてはひっそりと悦に入っていたのだ。
 源氏物語で、光の君がとある美男子を女装させて……つまりコスプレをさせたい、というような発言をしている。彼はノンケと魅せて(見せてではなく)実はバイである可能性が高い。当時の隠れ腐女子はさぞや大喜びしたであろう、表向きは平静を装いつつ。そして自室でこっそりと二次創作を描いていたに違いないのだ。
 その今でいうところの二次創作は、ひっそりと誰の目にも留まらずに朽ち果てていく予定だった筈だ。それが、何の因果か現代で発見され、それが堂々と世間に発表されてしまった。ご本人はさぞや恥ずかしく、居た堪れない想いをしているのではないだろうか。思えば清少納言の悪口が書かれている紫式部日記といい、まさか秘密にしていたものを暴かれ、世の中に公開されてしまう等とは紫式部様も夢にも思わなかったであろう。そう考えると、今私がひっそりと書かせて頂いている二次創作が後の世で……今、想像しただけで背筋が凍りついた。

 おっと、つい話が横道に反れた、元に戻そう。であるからこそ本来、二次創作とはファン仲間同士非公開グループで楽しむべきものなのだ。

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