第4話 湧き起こる欲

文字数 949文字

 ……この場面のここ、もしかしたらこのキャラはこんな想いが潜んでるんじゃないかなぁ。

 そんな妄想から、原作からお借りしたキャラ、物語の一部を切り取って空想する。それを文字に書き記していく。携帯のアラームが鳴る時まで、どっぷりと

に浸れる。酷く贅沢で至福の時だ。こんなに幸せで良いのだろうか? そんな風にも感じていた。その筈だった。

 特に二次作品への閲覧数やイイネ、ブックマークなどは気にならない。一次創作でもさほど人気がある方ではないし、そもそも二次創作自体が非公式で限り無く黒に近いグレーゾーンだからだ。殆ど読まれないくらいがちょうど良い。それでも一日に数名ほど閲覧の形跡があるのは、正直に言うと心地良かった。
 そんな中、二次創作を読み漁る中で学んだ事がある。己の性癖や空想を書き綴る中、『これは解釈違いだ、不快である』等とクレームをつけてくる読者も少なくないという事だった。そういうクレーム紛いの感想をつけられる方は、当然人気のある方が殆どだ。元来、公式様が片目を瞑ってくださっているだけで決して堂々と公開して良いものではない作品、かつ個人の妄想を書き綴る分野なので正解も何もないのだが、インターネットで公開する以上、色々な価値観の人が閲覧するのは当然のことであろう。故に、己の二次創作にはしつこい程に『個人の妄想であり考察や解釈ではない』『非公式の二次創作である事』『読後のクレームは一切受け付けない』という趣旨の事をキャプションに明記する事にしている。いささか自意識過剰ではあるが、完全なる趣味の世界で神経をすり減らすのは得策ではない。

 しかし、悲しいかな……人間の欲望は底なしだ。

……やっぱり、作品について語り合える人が欲しい……

 心の奥底に封じ込めた筈の欲望は、二次創作が慣れて来た頃に少しずつ漏れだしてきた。封印の札が欲求という風に剥がされてしまったようだ。

 そんな時だ。二次創作を読んで感想を頂いたのだ。『原作の解釈、私もそう感じました』と。別段、考察などを書き記した訳ではないが初めて反応を貰えて嬉しくなった私は、すぐに返信しやり取りをしていく内に原作について語り合おうと、SNSのアカウントを教え合う事となった。

 それが切っ掛けで、原作を語り合える仲間が少しずつ増えていった。

 
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