眠れぬ夜のたわむれに

文字数 644文字

午前0時、由美は皿に乗った料理を三角コーナーに捨てる。
三角コーナー、なんて変な名前かしら。三角で、コーナーだなんて。用途をちっとも表さない。
三角で、コーナー。形だけ。

由美は三角コーナーに、サワラの香草ワイン蒸しを捨てる。キャベツとベーコンのソテーを捨てる。ニンジンとツナのサラダを捨てる。コーンポタージュスープを捨てる。夫の好物たち。

三角コーナーに臭いが染み付く。魚の臭い、油の、青菜の、クリームの臭い。臭いが染み付き、腐臭になる。
生ゴミを処分しても、三角コーナーから異臭がする。生ゴミを取り去っても臭いは残る。魚の、青菜の、クリームの臭いが。

臭いが由美をいらだたせる。
大量の消臭剤を三角コーナーにふりかける。何度も何度もふりかける。三角コーナーはただ黙って、そこにあるだけだ。
そしてどんなにふりかけても、腐臭は消えない。

由美はバケツに水を張り、三角コーナーを水底に沈める。
浮かび上がろうとするのを、両手で押さえつけて沈める。
何度も何度も沈める。
水に閉じ込められた三角コーナーから、やっと腐臭が消える。
由美は満足して手を離す。
三角コーナーはゆっくりと、うつぶせたまま水面に浮かぶ。



「なんだ、起きてたのか。寝てていいのに」

夫の声に、由美は笑顔で振り替える。

「あら、お帰りなさい。お食事は?」

「いい。すませてきた」

「そう、お風呂は?すませた?」

「……いい。寝る」

夫が立っていた場所に、知らないシャンプーの臭いが残る。

由美は三角コーナーをつまみ上げてシンクにもどすと、
消臭剤をたっぷり振りかけた
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