01.保護者たち
文字数 3,503文字
あなたたちはそれぞれガールスカウトに通っている娘もしくは妹を迎えに隣の市にある「ペティグリュー・マンション」という施設にやって来ました。
ガールスカウトは23~25日という2泊3日の予定です。
あなたたちは25日の夕方に迎えに来るように事前にお知らせを受けており、それぞれ丁度ペティグリュー・マンションの前に集まりました。
ペティグリュー・マンションにはある伝説があります。
マンションの所有者だった「ペッパー・ペティグリュー」は莫大な遺産をこのマンションに隠している、というものです。
謎の「碑文」を遺しており、それを解くことができた者だけにその遺産を託したのです。
かほりはソワソワしながら背伸びをしてマンションの出入り口のほうの様子を伺います。
全然出てくる気配が無いのはおかしいと思い、かほりはマンションの呼び鈴を押しました。
じりりりりりり。
呼び鈴が鳴り響いたにも関わらず、マンションの中から何の反応もありません。
條二がドアノブに触れると、ガチャリと音がしてドアが開きました。
かほりとななは條二とサーミャの後ろについてマンションの中へと入ってゆきました。
マンションの中は、入ってすぐ玄関ホールになっていました。玄関ホールの入り口横にはマンションの案内図がありました。
マンション内は全くの無音です。物音一つせず、とても静かです。
かほりはポケットからスマートフォンを取り出し、妹・ゆかりに電話をかけました。
しかし、いくら呼び出しても電話に出ません。
かほりが玄関ホールを見渡すと、中央には大理石でできた「石碑」があり、壁にはとても大きな肖像画が飾られていました。
肖像画には、上品ですが鋭い目をした老婆が真っ赤なドレスを身に纏って座っています。肖像画の下には金色のプレートがあり、何やら文字が書かれているようです。
かほりは肖像画に近付き、プレートの文字を読んでみました。
プレートには「夢を探求せよ ー ペッパー・ペティグリュー」と書かれていました。
サーミャは、このマンションにペッパー・ペティグリューが貯め込んだものが隠されているという話をみんなに説明しました。
戦後まもなくアメリカから日本に移り住んできて生涯暮らしていた婦人、ペッパー・ペティグリュー。
婦人は大量の黄金を隠し持っており、それを使って豪勢な暮らしをしていたと言われています。婦人の死後、館は市に寄付され「ペティグリュー・マンション」と呼ばれ、主に子どもたちのためのセミナーハウスとして使用されています。
ペティグリュー・マンションの玄関ホールには大きな碑文があります。このマンションには婦人が貯め込んだ黄金が隠されているとされており、手がかりはその碑文であるという噂があります。
かほりはブツブツと呟きながら石碑に近付きます。
石碑には言葉が記されていました。
かほりは石碑の根元に「ハートのクィーン」のカードが挟まっているのを見つけました。
拾い上げてみると、それは紙でできたごく一般的なトランプの一枚でした。
かほりはトランプを拾い上げる際に、石碑が動いた痕跡があることに気が付きました。
そう言いながらトランプを裏表見てみますが、特に変わったところはありません。
かほりはトランプをズボンのポケットにしまいました。
サーミャは玄関ホールのドアを開き、廊下へ出ました。そのドアを開けても先程までと変わらずマンション内は無音です。
サーミャはガールスカウトの引率の先生が『ヨシナガ レイコ』という名前であることを覚えていました。
サーミャは先生の名前を呼びながら食堂のほうへ歩いて行きます。
遠くからサーミャの声が響きました。