04.首吊り死体
文字数 2,802文字
部屋C。
かほりは部屋Cにやって来ましたが、先程、部屋Bに死体があったため慎重になって室内に聞き耳を立てます。
室内はまったくの無音です。
玄関ホールからはドタドタと走る音が聞こえます。2メートルのロシア人・サーミャの足音です。
かほりはドアをノックしましたが反応はなく、仕方なくドアを開けました。
部屋Cの間取りや家具の配置は部屋Bと同じでした。しかし、先程の部屋とは一つだけ異なることがありました。
奥のベッドが、血を吸い込んで真っ赤です。
かほりは血まみれのベッドに近付き、ベッドの下を覗き込みました。ベッドの上の血液が雫となって零れていました。
毛布をめくってもそこには何も無く、ただただ血まみれになっています。
かほりはクローゼットを恐る恐る開けました。
しかし、中には何も入っていませんでした。
次に机に近付きます。奥の机の上には何もありません。引き出しを開けると、一枚のメモが入っていました。
かほりはメモに目を通します。
かほりはメモをポケットにしまいました。
続いてもう一つの机の上を見ると、書き置きが残されていました。
かほりは書き置きもポケットに入れて、部屋から出ました。
部屋D
ななは部屋Dにやって来ました。
施錠されていなかったため、恐る恐るドアを開けてみました。
部屋の中央で、天井から首吊り死体が吊り下がっているのを目撃してしまいました。
大変苦しかったのか、目を見開き、ななのほうを見詰めています。
恐る恐る見てみると、顔がパンパンに腫れ上がっていますが、その人相に見覚えがあることに気が付きました。首吊り死体はガールスカウトの引率の先生『ヨシナガ レイコ』でした。
ペティグリュー・マンション内にななの悲鳴が響きました。
この部屋は先程の部屋Bとは少々異なっていました。先程の部屋ではベッドや机が二つずつ設置されていましたが、ここでは一つずつです。
机に近寄ってみると、机の上には日誌がありました。
ななは日誌を手に持ち、クローゼットを開けてみました。
クローゼットの中には何も入っていませんでした。
机の引き出しを開けると「生徒名簿」が入っていました。
A室
山ノ下ゆかり(11)
坂上しおり(11)
B室
ソーフィヤ・ガーファンクル(11)
桜井シオミ(11)
C室
櫛田クミコ(11)
楼ケ崎響子(11)
ななが部屋Dから出ると、丁度サーミャがドタドタと廊下を走ってきました。
ななはサーミャに生徒名簿を見せました。
サーミャは生徒名簿を持ったまま、ロシア語で何かを叫びながら玄関ホールのほうへ走って行ってしまいました。
玄関のドアは開かないにも関わらずドンドンと叩いています。
ななは生徒名簿のことをかほりに話しました。自分の妹が部屋Aにいたことを知った二人は、急いでそちらに向かうことにしました。
部屋Aへ向かっている途中、書斎から歩いてくる楼ケ崎と合流しました。楼ケ崎にも生徒名簿の件を話し、一緒に部屋Aに行くことにしました。
玄関ホールの前を通ると、サーミャが図太い叫びを上げていましたが、妹のことしか頭に無いななとかほりの目には入りませんでした。楼ケ崎は「彼はどうしたんだろう」と思いながらも玄関ホールを通り過ぎました。
なな、かほり、楼ケ崎の3人が玄関ホールを通過した後になってサーミャはハッと我に返り、石碑の前ではたと立ち止まりました。
サーミャがフラフラと玄関ホールから出てきました。楼ケ崎がサーミャに気が付いて声をかけます。
あなたたちは部屋Aに辿り着きました。
かほりは部屋のドアを勢いよくバーンッと開きました。
室内は今まで見てきた部屋と同じ様相でした。
しかし、首の無い死体が机に突っ伏しているのを目撃してしまいました。
動揺していますが、かほりとななは気を確かに持っています。
死体はやはりガールスカウト共通のパジャマを着ているため、誰なのか判別することはできませんでした。
かほりは机のほうへ、楼ケ崎とななはクローゼットへ近付きます。
かほりが首無し死体が突っ伏している机の引き出しを開けてみましたが、何も入っていませんでした。
次に奥の机の引き出しを開けようとしましたが、鍵がかかっていて開けることができません。
首無し死体のポケットをあさってみても鍵は入っていませんでした。
ひた、ひた……ひた、ひた……
サーミャが部屋には入らず廊下に立っていると、何かがこちらに近付いてくる音を耳にしました。