02.首無し死体
文字数 3,101文字
食堂。
食堂の扉には鍵がかかっていませんでした。
扉を開けてみると、大きな長いテーブルと椅子がありました。壁には少女たちが描いたであろうキャンプの絵などが飾られています。
サーミャは長テーブルの真ん中に何やら見慣れないものを見付けました。何だろうと思って近付き、それをハッキリと目にしてしまいました。
そこにあったのは、首無しの少女の死体でした。死体を中心に血だまりが広がっています。
サーミャは大声で叫びました。
書斎に入ろうとしていたところサーミャの声が聞こえたので、楼ケ崎は引き返して食堂へと駆け付けました。
楼ケ崎が食堂に向かったのを見たかほりとななは、男性が二人もいるので大丈夫だろうと引き返さず、そのまま「部屋B」を見ることにしました。
楼ケ崎も長テーブルの上に横たわった首無し少女の死体を目にしてしまいました。
サーミャはまさか自分の娘ではないか確認しようとします。
しかし、この死体は頭部がなく、ガールスカウト共通のパジャマを着ており、また、サーミャの娘は日本人とのハーフであり肌の色が日本人と見分けが付かないため、判別することはできませんでした。
サーミャはその場に娘の持ち物が無いか探してみますが、何も見付けることはできませんでした。
楼ケ崎は凶器が無いか探してみますが、辺りにはそのようなものは無いようです。
また、死体を引き摺った跡はなく、血だまりが広がっているだけです。
ななとかほりは部屋Bに到着しました。
コンコン。
かほりは部屋のドアをノックしましたが、反応はありませんでした。
ドアを開けてみると、室内は手前と奥に二つのベッドとベッドランプ、引き出し付きの小さな机が二つ、共用のクローゼットが一つありました。部屋の家具は古いもののようです。
ガリガリッ、ガリガリッ。
部屋の中に入ると、クローゼットの中から何かを引っ掻く音が聞こえます。
かほりはクローゼットをノックすると、引っ掻く音はやみました。
ななが話しかけてもクローゼットからは何も返事はありません。
かほりはクローゼットのドアをゆっくりと開けます。
すると、中から何かが転げ落ちてきました。
かほりが驚いて飛び退くと、クローゼットのドアがすべて開き、首無し死体がゴロリと転げました。そしてクローゼットの中には、さらにもう一つ首無し死体がありました。
ななとかほりは絶叫を上げました。
食堂にいた楼ケ崎とサーミャにも、ななとかほりの悲鳴が聞こえ、二人は部屋Bへと駆け付けました。
ななは警察に電話しましたが、いくらコールしても電話は一向に繋がりません。
かほりもスマートフォンを取り出して警察に電話してみますが、やはり誰も出ません。
ななは首無し死体をよく見てみますが、同じパジャマを着ており、頭部がないため妹であるかどうか判別することはできませんでした。
かほりが妹の持ち物が無いか机に近付いてみると、手前の机の上に一冊の本が置いてありました。
本を手に取りタイトルを読んでみると『真紅伝説』とありました。読んでみると次のような内容でした。
『真紅伝説』
人の死体を集めて愛でる婦人の物語。
物語の最後に、婦人は老いさらばえて死ぬことになるが、魔術によって若い女に乗り移って新たな生を得る。
かほりに本を手渡され、ななも中身に目を通してみました。
かほりが隣の机に目をやると、そこには何も置かれていませんでした。
机の引き出しを開けると、ガールスカウトで支給されたであろう新品のノートや備品などしかなく、特にめぼしいものはありませんでした。
ななはベッドを見てみますが、使用された形跡はあるものの、特に何も見付けられませんでした。ベッドの下を覗いてみても、清掃されているなという印象を受けるだけで何もありませんでした。
ななとかほりは妹を探すために部屋から出ました。サーミャは犯人がいるのではないかと周りを警戒しつつ二人に続きます。
楼ケ崎は書斎へと歩いて行きました。
楼ケ崎書斎へ入ってゆき、ななは「部屋D」へ、かほりは「部屋C」へ、サーミャは玄関のほうへ向かいました。