夜の中にいる女|愛されなかった

文字数 435文字

あなたの居る海は、
ときには雄々しく
ときには優しく
ときには恐ろしく
ときには穏やか

「今日の水温はどうですか? 風は?雨は?雲は?太陽は?」

ひとつ ひとつ 絶え間ない波は一日も忘れる事がなく
弱くなったり 強くなったり…。
わたしのように止まることを知らない。

愛されなかったわたしの薄っぺらなプライドを止める方法を知らないから、今日もあなたの海に向かう。

偶然、出会ったとしても視線を合わせることなく、あなたの元へ尋ねる勇気もなく、迷ったあげくに少し離れたところからあなたの海を見ているだけ

灯台で座り込み 遠くのあなたに憧れ訊ねる。
「今日の波はどうですか?」 

風と光が作る満天の星が落ちた波模様。
あなたの海が散らかした日差しの欠片で癒されるのは、あなたの愛を受けた者だけ

愛されなかった者は
その同じ欠片が渇いた皮膚を貫き体の中から深く傷つける。

愛された記憶がないまま
楽しくもない 悲しくもない 魂のない体は向かい風に体を預け

ふあふあと足が舞う
すべてを忘れられたらどんなに心地よいだろう
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