大海を渡る|微睡み

文字数 386文字

斜に構えて気取った彼女が「いつか終わるから生きてられる」と穏やかに呟いた。

自分の目的のために、都合よく記憶を書き換えていくのは愚かだ。

同じ失敗を何度も繰り返すことになる。

僕の大好きな彼女は呆れ返るほど正直で無垢だ。

「皆が何を言っているのか全くわからない」と困り切った顔で訴える。

そうやって、僕の手に落ちた君

「嘘をついたことはないの?」と聞くと「嘘は頭のいい人がつくものよ。私は頭が悪いから嘘つくと辻褄を合わせる自信がないもの」と情けなそうに笑う。

騙されて、利用されて、生きているのも辛いことが多い。

泣いてばかりで放っておけない彼女。

それでも「無理をしないで、欲を出さなければ、沢山のご褒美がある」と満面の笑み
嘘つきな僕は「ああ」と答える。

一見、ひどく悲しく痛い人のようだが、嘘つきの僕よりずーと、痛くない人生を歩んでいる。

毎日の僕の微睡はそんな彼女の笑顔で満たされている。
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