大海を渡る|忍び人

文字数 251文字

懐かしそうに、私を求めるように昔の人が立っている。

目の前の出来事は偶然か必然か…。

昔の人から目を離すとショーウィンドウに口紅が映る。

目に留まった口紅に気を取られ足を止めた。

紅を差していた頃を思い出す。

誘われるまま、二人で向き合って座る。

泥だらけ、傷だらけになって、お母さんに怒られる前の言い訳のように、やけに早口で色々な事を一度に話そうとしている。

しばらく、私のすべてで昔の人の姿を探し反復する。

ガラガラガッシャーンと、全身血だらけの私の頭の中で、シャッターが閉まる音がして、私は黙ったまま席をたった。
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