Ⅹ.トレイントレイン
文字数 865文字
強くなるために、魔物を倒す。冒険者として生きるものならば誰でも知っていることだ。そして、何事にも効率の良い方法というものがある。
一人でギリギリ倒せる魔物は、リスクも高いし、体力や魔力を頻繁に回復しなくてはならない。回復の必要がないくらい弱い魔物は、ほとんど経験値にならないから膨大な数を倒さなくてはならない。
だから、世の中にいるほとんどの冒険者はパーティを組み、タンク役、攻撃役、回復役、と戦闘での役割を分担して自分達より強い敵を倒すのだ。
オレは今日、所属しているギルド『†漆黒の狩人†』の仲間たちとカニ鍋だ。カニ鍋というのは、デッドマンズオアシスに生息する蟹型の魔物、ヘルシザースを倒して経験を積むことだが、ヘルシザースの弱点が熱属性であることからこの呼び名がついた。
「おしゅしさん! タゲ取りお願いします!!」
「お任せあれ。おおおおお、プロボケーション!!」
前衛では、タンク役のおしゅしさんが敵を引きつけ、攻撃役のNEKOLOVEさんが魔物を背後から攻撃している。後衛の攻撃役であるオレは、魔力を溜めて蟹の弱点である熱魔法をお見舞いするのが役目だ。
「魔力OKです。熱魔法いきますよ。バーニングトルネーーーーッド!!!」
高温の竜巻が蟹を天高く巻き上げる。NEKOLOVEさんの物理攻撃をものともしない頑強な甲羅が沸々と泡立ち、大きな鋏を振り回して悶えている。やがて魔力の竜巻がおさまると、地面に打ち付けられた蟹が口から泡を吹いて倒れていた。
「卍修羅卍さん、ラストショットおつですー」
回復役の白桃姫さんの労いが、蟹にトドメを刺した高揚感と入り混じって、背筋がゾワゾワする。なんと気持ち良い感覚だろうか。
「あ、ヤバい! トレインだ!!」
おしゅしさんが叫んだ。
街へと走る二人の男と、それを追う巨大な猿の魔物が二匹、電車のように連なっているのが見えた。男たちが無事に街へと逃げ込むと、獲物を見失った猿の魔物達は、別の獲物を探してあたりをうろつき始める。そう、オアシスで立ち竦む別の獲物を――。
一人でギリギリ倒せる魔物は、リスクも高いし、体力や魔力を頻繁に回復しなくてはならない。回復の必要がないくらい弱い魔物は、ほとんど経験値にならないから膨大な数を倒さなくてはならない。
だから、世の中にいるほとんどの冒険者はパーティを組み、タンク役、攻撃役、回復役、と戦闘での役割を分担して自分達より強い敵を倒すのだ。
オレは今日、所属しているギルド『†漆黒の狩人†』の仲間たちとカニ鍋だ。カニ鍋というのは、デッドマンズオアシスに生息する蟹型の魔物、ヘルシザースを倒して経験を積むことだが、ヘルシザースの弱点が熱属性であることからこの呼び名がついた。
「おしゅしさん! タゲ取りお願いします!!」
「お任せあれ。おおおおお、プロボケーション!!」
前衛では、タンク役のおしゅしさんが敵を引きつけ、攻撃役のNEKOLOVEさんが魔物を背後から攻撃している。後衛の攻撃役であるオレは、魔力を溜めて蟹の弱点である熱魔法をお見舞いするのが役目だ。
「魔力OKです。熱魔法いきますよ。バーニングトルネーーーーッド!!!」
高温の竜巻が蟹を天高く巻き上げる。NEKOLOVEさんの物理攻撃をものともしない頑強な甲羅が沸々と泡立ち、大きな鋏を振り回して悶えている。やがて魔力の竜巻がおさまると、地面に打ち付けられた蟹が口から泡を吹いて倒れていた。
「卍修羅卍さん、ラストショットおつですー」
回復役の白桃姫さんの労いが、蟹にトドメを刺した高揚感と入り混じって、背筋がゾワゾワする。なんと気持ち良い感覚だろうか。
「あ、ヤバい! トレインだ!!」
おしゅしさんが叫んだ。
街へと走る二人の男と、それを追う巨大な猿の魔物が二匹、電車のように連なっているのが見えた。男たちが無事に街へと逃げ込むと、獲物を見失った猿の魔物達は、別の獲物を探してあたりをうろつき始める。そう、オアシスで立ち竦む別の獲物を――。