XI.侵入者ヲ排除シマス
文字数 955文字
ビー、ビー、ビー、真夜中の研究室に警報が鳴り響く。原因は――俺だ。
俺の仕事は、有り体に言えば泥棒だ。
泥棒といっても、空き巣みたいなダサいやつじゃない。クライアントの依頼を受けて、指定されたものだけを盗んでくる、プロの泥棒だ。
この研究室にスタンドアローンで保管されている機密データをコピーしてくること。それが俺の今回の任務だ。何ヶ月も準備して、無事に機密データのコピーに成功したというのに、最後の最後でヘマをしちまった。
「侵入者ヲ排除シマス」
無機質な音声と共に、飛行型ドローンが一機、背後に現れた。ドローンの腹部からこちらを覗いている銃口。タタタタタタタタッ、鉛玉が連続して撃ち出され、俺の足元から十センチメートルほど隣に着弾した。威嚇射撃、警告、ということらしい。
ここは二階、このドローンさえ始末すればどうとでも逃げられる。俺は、脇の下にあるガンホルダーから銃を抜き出し、ドローンに向けて発砲、いや発射した。銃口からは紐付きの小さなミサイルのようなものが2本飛び出し、ドローンに引っ掛かる。その刹那、ドローンに大量の電流が流れた。銃の形態をした中距離用のスタンガン。いわゆるテーザー銃というやつだ。
変な匂いの煙を出して、落下するドローンを確認すると、俺はすぐ側の窓から飛び出して地上へと降り立った。あとは、敷地から抜けるだけ。ズボンについた汚れを払い、壁を見つめる。
「侵入者ヲ排除シマス」
またしても無機質な音声が聞こえた。テーザー銃を構えて振り向くと、俺を囲む大量の飛行型ドローン。どう見ても十機はくだらない。
「くっ……」
テーザー銃でなんとかなる数ではない。もちろん、こんな状況を想定した対策は用意してある。だが、アレを使うのは――いや、捕まるよりはマシか。
俺は覚悟を決めて、切り札を投げた。右手から放たれた黒いボールは、宙に浮かぶとあたりの空気が変えていく――ズシンと体が重くなった。
ボールを中心に半径五十メートル範囲に強い重力場を発生させる『過重力発生装置』だ。
ドローンは耐え切れず、次々と地面にひれ伏していく。そして、同じくおれも膝をついて崩れ落ちる。
「ああああ、また大赤字だああああ」
俺の魂の叫びは、研究所を囲む山林の木々に吸い込まれていった。
俺の仕事は、有り体に言えば泥棒だ。
泥棒といっても、空き巣みたいなダサいやつじゃない。クライアントの依頼を受けて、指定されたものだけを盗んでくる、プロの泥棒だ。
この研究室にスタンドアローンで保管されている機密データをコピーしてくること。それが俺の今回の任務だ。何ヶ月も準備して、無事に機密データのコピーに成功したというのに、最後の最後でヘマをしちまった。
「侵入者ヲ排除シマス」
無機質な音声と共に、飛行型ドローンが一機、背後に現れた。ドローンの腹部からこちらを覗いている銃口。タタタタタタタタッ、鉛玉が連続して撃ち出され、俺の足元から十センチメートルほど隣に着弾した。威嚇射撃、警告、ということらしい。
ここは二階、このドローンさえ始末すればどうとでも逃げられる。俺は、脇の下にあるガンホルダーから銃を抜き出し、ドローンに向けて発砲、いや発射した。銃口からは紐付きの小さなミサイルのようなものが2本飛び出し、ドローンに引っ掛かる。その刹那、ドローンに大量の電流が流れた。銃の形態をした中距離用のスタンガン。いわゆるテーザー銃というやつだ。
変な匂いの煙を出して、落下するドローンを確認すると、俺はすぐ側の窓から飛び出して地上へと降り立った。あとは、敷地から抜けるだけ。ズボンについた汚れを払い、壁を見つめる。
「侵入者ヲ排除シマス」
またしても無機質な音声が聞こえた。テーザー銃を構えて振り向くと、俺を囲む大量の飛行型ドローン。どう見ても十機はくだらない。
「くっ……」
テーザー銃でなんとかなる数ではない。もちろん、こんな状況を想定した対策は用意してある。だが、アレを使うのは――いや、捕まるよりはマシか。
俺は覚悟を決めて、切り札を投げた。右手から放たれた黒いボールは、宙に浮かぶとあたりの空気が変えていく――ズシンと体が重くなった。
ボールを中心に半径五十メートル範囲に強い重力場を発生させる『過重力発生装置』だ。
ドローンは耐え切れず、次々と地面にひれ伏していく。そして、同じくおれも膝をついて崩れ落ちる。
「ああああ、また大赤字だああああ」
俺の魂の叫びは、研究所を囲む山林の木々に吸い込まれていった。