第6話

文字数 512文字

「随分と可愛らしい神ね」雪子は答えた。隙間の神の自信満々で尊大な態度を前にして、雪子は弱みを見せる事を生理的に嫌がった。有り体に言えば、コイツにはナメられたくない、と感じたのだった。しかしながら、彼女の口調には、虚勢の色があった。二本の足で立ち、人語を解するマウス、その存在こそ、まさに科学では説明の出来ないものだった。正直なところ、雪子は混乱していた。いったいコイツは何者なのか?本当に神様?もしそうだとして、何故ここに?当然の如く疑問は尽きなかった。隙間の神は、その丸い目で雪子の事を真っ直ぐに見つめていた。雪子も隙間の神から目線をそらすまいとした。何しろ、隙間の神は、雪子が実験をしていた机の上にいたのだ。もしヤツが実験器具にいたずらでもしようとしたら、何としても阻止しなければならないと思った。雪子は、軽い息苦しさを感じた。
「可愛らしいとは、随分な言い方だな」隙間の神は腕を組んだまま答えた。「これでも昔は、もっと強くて大きかったんだぜ。それこそ、お前みたいな小娘一人、片腕だけで捻り倒してやれる位にさ」そういうと隙間の神は左腕を振るって見せた。何ならひと暴れしてやってもいいんだぜ、とでも言いたげな態度だった。
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