第2話
文字数 584文字
実験の作業を続けながら、雪子は頭の中で自分が大学院に入ってからの頃を思い出していた。最近は、一人でいるときは過去の事をクヨクヨと思い返すのが、彼女の悪い習慣になってしまっていた。指導教官から『広節裂頭条虫の腸管内寄生成立に関するエピジェネティクス』という長ったらしいタイトルの研究テーマを与えられた時、雪子はあまりピンと来なかった。率直に言えば、あまり興味が湧かなかった。しかしながら、一介の大学院生にテーマを自分で選ぶ権利など無かった。彼女は言われるままに論文を読み、実験手技を習得するべく練習した。他人に言われた事をやっているうちは大きなトラブルは無かった。分からない事や上手くいかない事は、誰かに聞けば教えてくれたので、すぐに解決した。大学院生としての最初の1年は、そうしてまぁまぁ平穏に終わった。
しかし2年目に入って、彼女は壁にぶつかった。この年度になると、雪子は科学者の卵として、自ら仮説を立ててそれを検証する事を求められるようになった。その時になって初めて雪子は、興味の無い事について考察する事の苦痛を思い知らされた。それでも何とか考えを捻り出し、それを検証するために実験を行ったが、期待した結果は簡単には得られなかった。そうこうしているうちに、桜は散り、セミは死に絶え、紅葉の季節も終わり、あっという間に冬が来た。
外では、冷たい雨が降り続いていた。
しかし2年目に入って、彼女は壁にぶつかった。この年度になると、雪子は科学者の卵として、自ら仮説を立ててそれを検証する事を求められるようになった。その時になって初めて雪子は、興味の無い事について考察する事の苦痛を思い知らされた。それでも何とか考えを捻り出し、それを検証するために実験を行ったが、期待した結果は簡単には得られなかった。そうこうしているうちに、桜は散り、セミは死に絶え、紅葉の季節も終わり、あっという間に冬が来た。
外では、冷たい雨が降り続いていた。