第5話

文字数 512文字

「隙間の神?」雪子は訊き返した。その言葉には聞き覚えがあった。咄嗟には思い出せなかったが、数秒ほど考えた後に、それがどういった言葉かを思い出した。
 科学が未発達な時代、この世のあらゆる現象は宗教的な理論で理解されていた。雷も、病気も、天体の運行も、全ては神の思し召しであるとされていた。しかし時代が下り、徐々にそういった現象に科学のメスが入っていった。人々は、自然現象を科学的に理解するようになった。それでも世の中には、宗教を捨てない人間がいた。彼らは、世界には科学で説明出来ない事象もあると言い、それこそが神の奇跡であると主張した。しかしながら、科学者は宗教家の反抗に対して冷酷だった。確かに世の中には、『今は』科学で解決出来ていない問題もある。しかしそういった問題も、次々と科学的に解明されて行っている。そうやって『科学で説明出来ない事象』はどんどんと減ってゆく。君たちの信じている神とやらは、そういったどんどん狭くなってゆく『隙間』にしか居場所の無い出来ない哀れな存在じゃないか。科学者は、そう言って哀れな宗教家を一蹴したのだった。
 しかし、その『隙間の神』を自ら名乗る存在が、今まさに雪子の目の前に現れたのだ。
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