第10話

文字数 469文字

「俺を無視するというのか?」隙間の神は怒りを露わにして言った。「お前たち人間には、俺を殺す事は出来ない。それは認めるんだろう?だのにお前はこの俺を見なかった事にすると言うのか?お前はそれでも科学者か?現実から目を背けるのが、科学的態度か?お前がその気ならこちらにも考えがある。この机の上にある実験器具を片っ端からぶちまけてやるぞ!」
「あなたにはそんな力は無いわ」雪子は取り合わなかった。「あなたはしょせん、私が見ている幻覚だもの。私はちょっと実験が上手くいかなくて、それで精神的ストレスを感じて『隙間の神』だなんて幻覚を見た。だから私は薬を飲んだ。それだけの話よ」彼女は、椅子の背もたれに寄りかかった。ゆっくり、深く呼吸をしようと努力した。「『神は死んだ』ってのは間違いだったのかもね。でも、科学の力で私はあなたを追っ払うのよ」雪子は目をつぶった。隙間の神はなおもチューチューと喚き続けたが、もう雪子はその言葉を聞くつもりはなかった。寒さのせいで、身体が随分と強ばっている様だった。
 その時、不意に実験室の外の廊下に明かりがついた。
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