第9話

文字数 447文字

「よりによって神がニーチェを引用する?」彼女は呆れて言った。「いいわ、あなたの言い分は良くわかった。でももうこれ以上あなたのお喋りに付き合うのは御免よ」雪子はかじかむ手で白衣の右ポケットをまさぐった。様々な紙切れ、コンビニで買ったシュシュ、小型のはさみ、3色ボールペン……そういったものを掻き分けて、雪子は目当てのものを見つけた。それは、小さな白い錠剤だった。
「これを飲むわ」
「何だ、それは?」隙間の神は、首を捻って訊ねた。
「抗不安薬。精神科の先生に、イライラする時や不安で辛い時に飲みなさいって言われてるの」雪子は、錠剤を1錠手に取り、しばらく考えてから、もう1錠取り出した。
「反論出来なくなったか?俺の言う事を認めるんだな?」隙間の神は、雪子を指差して挑発した。しかしその言葉には、どことなく焦りがある事を、雪子は感じ取った。彼女は隙間の神を無視して、2錠の錠剤を口に含むと、自分の唾液で飲み込んだ。尤も、この時雪子は口の中が乾いていたので、錠剤を飲み込むのは一苦労だったのだが。
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