第8話
文字数 1,773文字
その日の女子会のメインディッシュは、もちろん私。梨花さんならずとも、女子にとってその類のお話は大好物です。
集まったメンバーは、全員彼のことを知っていましたし、恋人との旅行時のアリバイ作りの片棒を担ぎ合った仲間同士ですから、これまでの展開に、盛り上がり方も半端じゃありません。
まあ、でも、やはり彼の執着には、誰もが不気味さを感じたようです。
そして、この日はもうひとつ、新たな事実を知ることになりました。急遽飛び入り参加した千種ちゃんの実家が、彼の実家と同じ市内で、彼女のお兄さんと彼は、中学・高校の同級生だったのです。
当然、全員の興味は、彼の家のことに集中しました。
「ごく普通の家だよ。特に豪邸でもないし、お金持ちっていう話も聞いたことないし」
「でも、3~4年前に新築したんじゃないの?」
「あの辺りで、ここ数年新築したお家はなかったと思うよ。比較的古い町だから、建ててればすぐに分かるもの」
「じゃあ、教育関連で、代々名士の家柄っていうのは?」
「あ、それはないと思う。だって、うちのお兄ちゃん、先生してるから」
こんな形で露呈するなんて、世の中は狭いものです。
誰にでも見栄を張ることはあるでしょうし、それが悪いとは思いません。でも、長く付き合っていれば、いずれは分かってしまうことですから、バレた時のことを考えて普通はしないと思います。
すると、友人たちが言いました。
「それって、都合の良い女だと思われていたんじゃない?」
「そうそう! こうめって、あまり相手のことを詮索したり、問い詰めたりしないタイプだから、嘘つく人にとっては楽なんだと思う」
「実家が金持ちって言えば、女は誰でも尻尾振って付いてくるってか?」
「それで彼女にデート代折半させてたんじゃ、意味ないでしょ~」
「ああ、あれかな? 結婚すれば、家の財産はゆくゆくは君のもの、的な?」
「ママンが反対してるから、結婚は出来ないんだ~、でも、別れたくないから、ずっと愛人ではいて欲しいんだ~?」
「妻でも愛人でも、資産家じゃなきゃ、どっちもメリットないよね」
「破綻したら、今までついてた嘘もバレなくて済むのに、それでもまだこうめに絡んでくる理由って何?」
「多分、いつか嘘がばれても、許して貰えるくらいに思ってるんじゃない? 『そうなんだ~』程度で、それ以上追及されないだろう、みたいな」
「それにしても、よく5年も続いたよね~」
「何かさ、私たちで、思いっきり叩きのめしてやりたくなるわ」
「っていうか、これだけでも結構なインパクトだけど、もしかして、まだまだ出てくるかも知れないよね…?」
その言葉に、私を含めた誰もが、一瞬言葉を失い、そして大きく頷きました。
前に、梨花さんと話した項目を皆に話すと、もうすでに考えられることの大半が該当していることに、呆れるを通り越して、笑ってしまう状態です。
ただ、ここまで来ると、一番それだけはあって欲しくないと思う『別の女性』がいる可能性も、強く懸念される気がしてきました。
「あ、それから、頼まれていた口座の件、方法があったわよ」
「ありがとう! 助かるわ~」
「彼なら、自分の支店に口座がある限り、それを口実に、絶対に連絡してくるものね」
真里菜ちゃんのアドバイスでは、利便性を考えてなるべく近くの同じ銀行の別の支店へ行き、そこで、
『今ある口座の支店が、あまりにも遠方にあるために、定期預金の解約をしたくても、とても行く時間がない』
『近々、旅行などの理由でお金を引き出したい』
『また、今後も同様のことが考えられる』
という内容を説明し、口座を移したいという旨のお願いをすれば、今ある支店の口座の解約手続きと、新しい支店の開設手続きを、銀行側でやってくれるとのこと。
そうすれば、銀行口座は作り変えた支店発行のものになるので、担当者も変わりますし、新しい支店で解約手続きも出来ます。
ただ、同じ銀行に口座がある限り、立場を利用して連絡を取って来る可能性は大いに考えられますので、なるべく早いうちに、口座自体を解約してしまうこと、そうすれば、彼も連絡することは出来なくなるのです。
週が明けた月曜日、私は会社を抜け出し、早速手続きを行いました。小一時間で帰社し、受け付けの梨花さんに小さくピースサインをすると、彼女も小さく親指を立てて返してくれました。
集まったメンバーは、全員彼のことを知っていましたし、恋人との旅行時のアリバイ作りの片棒を担ぎ合った仲間同士ですから、これまでの展開に、盛り上がり方も半端じゃありません。
まあ、でも、やはり彼の執着には、誰もが不気味さを感じたようです。
そして、この日はもうひとつ、新たな事実を知ることになりました。急遽飛び入り参加した千種ちゃんの実家が、彼の実家と同じ市内で、彼女のお兄さんと彼は、中学・高校の同級生だったのです。
当然、全員の興味は、彼の家のことに集中しました。
「ごく普通の家だよ。特に豪邸でもないし、お金持ちっていう話も聞いたことないし」
「でも、3~4年前に新築したんじゃないの?」
「あの辺りで、ここ数年新築したお家はなかったと思うよ。比較的古い町だから、建ててればすぐに分かるもの」
「じゃあ、教育関連で、代々名士の家柄っていうのは?」
「あ、それはないと思う。だって、うちのお兄ちゃん、先生してるから」
こんな形で露呈するなんて、世の中は狭いものです。
誰にでも見栄を張ることはあるでしょうし、それが悪いとは思いません。でも、長く付き合っていれば、いずれは分かってしまうことですから、バレた時のことを考えて普通はしないと思います。
すると、友人たちが言いました。
「それって、都合の良い女だと思われていたんじゃない?」
「そうそう! こうめって、あまり相手のことを詮索したり、問い詰めたりしないタイプだから、嘘つく人にとっては楽なんだと思う」
「実家が金持ちって言えば、女は誰でも尻尾振って付いてくるってか?」
「それで彼女にデート代折半させてたんじゃ、意味ないでしょ~」
「ああ、あれかな? 結婚すれば、家の財産はゆくゆくは君のもの、的な?」
「ママンが反対してるから、結婚は出来ないんだ~、でも、別れたくないから、ずっと愛人ではいて欲しいんだ~?」
「妻でも愛人でも、資産家じゃなきゃ、どっちもメリットないよね」
「破綻したら、今までついてた嘘もバレなくて済むのに、それでもまだこうめに絡んでくる理由って何?」
「多分、いつか嘘がばれても、許して貰えるくらいに思ってるんじゃない? 『そうなんだ~』程度で、それ以上追及されないだろう、みたいな」
「それにしても、よく5年も続いたよね~」
「何かさ、私たちで、思いっきり叩きのめしてやりたくなるわ」
「っていうか、これだけでも結構なインパクトだけど、もしかして、まだまだ出てくるかも知れないよね…?」
その言葉に、私を含めた誰もが、一瞬言葉を失い、そして大きく頷きました。
前に、梨花さんと話した項目を皆に話すと、もうすでに考えられることの大半が該当していることに、呆れるを通り越して、笑ってしまう状態です。
ただ、ここまで来ると、一番それだけはあって欲しくないと思う『別の女性』がいる可能性も、強く懸念される気がしてきました。
「あ、それから、頼まれていた口座の件、方法があったわよ」
「ありがとう! 助かるわ~」
「彼なら、自分の支店に口座がある限り、それを口実に、絶対に連絡してくるものね」
真里菜ちゃんのアドバイスでは、利便性を考えてなるべく近くの同じ銀行の別の支店へ行き、そこで、
『今ある口座の支店が、あまりにも遠方にあるために、定期預金の解約をしたくても、とても行く時間がない』
『近々、旅行などの理由でお金を引き出したい』
『また、今後も同様のことが考えられる』
という内容を説明し、口座を移したいという旨のお願いをすれば、今ある支店の口座の解約手続きと、新しい支店の開設手続きを、銀行側でやってくれるとのこと。
そうすれば、銀行口座は作り変えた支店発行のものになるので、担当者も変わりますし、新しい支店で解約手続きも出来ます。
ただ、同じ銀行に口座がある限り、立場を利用して連絡を取って来る可能性は大いに考えられますので、なるべく早いうちに、口座自体を解約してしまうこと、そうすれば、彼も連絡することは出来なくなるのです。
週が明けた月曜日、私は会社を抜け出し、早速手続きを行いました。小一時間で帰社し、受け付けの梨花さんに小さくピースサインをすると、彼女も小さく親指を立てて返してくれました。